日記十五回(その3)


数時間後・戦闘庭フレイヤ


フロースヒルデ「みんな揃ったわね。 じゃあこれから会議を開きたいと思います。

主な議題は、『これまでの状況整理』。 訳のわからない事が立て続けに起こったから、一度整理しておかないとね」

 私達はトンカのマカマカ団アジトの家捜しを終えると、状況を整理するために一旦『フレイヤ』へと戻った。

 勿論、私の体とその他大勢の資料・証拠類も、一緒に艦に運び込んである。

フロースヒルデ「これまで分かった事は…… 長官達をミジンコにしたのも、私をネコマタにしたのも……

全部『マカマカ団』なる組織の仕業であるという事……

そしてそのマカマカ団は、この星の組織ではないらしいという事……そうよね、ミュー」


ミュー「いや、フロース。 奴ら『マカマカ団』については、もうこの星の組織で無い事は確定だ」

フロースヒルデ「どういう事かしら?ミュー」

ミュー「連中のアジトにあった兵器類を調べてみたら…… 明らかにこの星の物では無い機械類や、金属類が多数見つかった。

奴らが宇宙人の秘密結社である事は、ほぼ間違いないだろう」

フロースヒルデ「なるほど……」


ジークウルネ「でも、他所の星の秘密結社が、何でアクロニアまでわざわざ出張って来たのでしょう?」

 ジークが、もっともらしい疑問をミューにぶつけた。

ミュー「さっき混成騎士団のメインコンピューターに潜入してみた所、ミジンコに変えられてしまった人間は……

南軍長官だけでなく、騎士団上層部の多くの人間が、ミジンコに変えられてしまっている事が分かった。

これは即ち、連中がアクロニアを乗っ取るべく…… 騎士団上層部の連中をミジンコに変えて混乱を煽ったんだと、あたしは思う」

フロースヒルデ「そう…… 随分と暇かつ迷惑な宇宙人連中もいたものね」

ミュー「同じ宇宙人として、恥ずかしい限りだ……」

フロースヒルデ「それと……さらに差し迫った問題としては……正気を失った元帥達を元に戻す事と……」

ミュー「あと、フロース自身が早く元の体に戻る事……だな」

フロースヒルデ「ええ…… っとそうだ、ミュー、ジーク。

山吹中佐や藍副長、茜少佐は無事かしら?」

 今まで元帥や自分自身の事で気が動転して、山吹中佐達の事を失念していた。


山吹中佐「ああ、艦長。 うちら全員、無事や」

 唐突に、山吹中佐がミューのリュックの中から文字通り『湧いて出て』きた。


藍副長「私達は前々から元帥閣下の命で、宿主をミュー様やジーク様に移すように言われておりました。

恐らく、あのお方は今回のような事態を想定いたのだと思います」


茜少佐「とりあえず、我々の宿主であるミュー様やウルネ様が無事である以上、我々3匹も至って健康であります。

なのでいつもどおり、何なりとお申し付け下さいませ」

フロースヒルデ「そう…… それは良かった……」

 『不幸中の幸い』、とはまさにこの事である。


藍副長「NHK(猫放送協会)経由の情報だと、今回の元帥閣下のように廃人ならぬ廃猫になってしまったネコマタを元に戻すには……

この世界のどこかに散らばる、ネコマタ達の心を回収する必要があると聞き及んでいます。

……ですよね、藪殿」

 NHK(猫放送協会)とは、藍副長のように飛空庭の留守番をやっているネコマタ達が作ったといわれる報道機関である。

 その情報網は騎士団の情報網のそれなど比較にならない程広く、幹部にはECO家の一族のおまささん、Quartetto!のフェアさんなど、

ネタブログ界の大物ネコマタたちが就任していると聞く。

 あと、元帥の話ではうちの菫少将も、NHKの大幹部を勤めているという話だ。


Dr・藪「ああ、その通りだ。 しかし……」

藍副長「藪様、何か問題でも?」

Dr・藪「元帥達の心の回収は、フロース君自身の治療より先に行う必要がある。

詳しい原理の説明はここでは避けるが…… 先にフロース君を元に戻してしまうと、元帥達の消失は回避できるが、二度と心は元に戻らなくなるからね」

藍副長「なるほど…… で、藪殿。 フロース様の治療の目処は?」

Dr・藪「ああ、それについては、既に対策は立ててある」

 というなり、藪先生はカバンの中から何か……水晶のような物を取り出した。

Dr・藪「これはアイシー族の族長よりもらったプリズムだ。 これを使えば、フロース君の治療自体は容易に出来る」

ミュー「……随分と、準備がいいんだな」

Dr・藪「最近、フロース君以外にもネコマタと精神融合を起こした冒険者達が多数いると聞いてね。

万が一の時の備えて、幾つか入手しておいたのだよ」

ジークウルネ「そうですか……よかった……」

 藪先生の先見の明には、改めて頭が下がる思いだった。


ミュー「となると、あたし達が最優先にすべき事は、廃猫になってしまった元帥と菫少将の心を回収する事……か」

Dr・藪「ああ。 ちなみにミジンコになってしまった長官達は放っておいても死にはしないから……

後回しでも一向に問題無いだろう」

フロースヒルデ「そう…… とそうだ先生。 長官達を治す方のプリズムは、手に入ったでしょうか?」

Dr・藪「ああ、そっちの方もGetしてあるよ。

ただ問題は…… 元帥達の心がどこにあるのかが不明……という事だな」


ジークウルネ「あの…… もしかしたら『ダウジング』を使えば、元帥達の心の在り処が見つかるかも知れません」

 ジークがおずおずと、口を開いた。

フロースヒルデ「ダウジング?」

ジークウルネ「超能力の一種で、本来は地中の水脈や金属を探し当てる物なのですが……

他の探し物にも、応用が利きます。

……元帥か菫少将の心相手に一度、試してみましょうか?」

フロースヒルデ「わかったわ。 ……やって頂戴、ジーク」

ジークウルネ「わかりました。 まずは菫少将の心から……」

 というなり、ジークは机の上に世界地図を、手には名にやら振り子のような物をもち、静かに目を閉じた。

 そして数刻後、振り子の先端部分が地図上の一箇所…… 『鬼之寝床岩』の辺りを指した。

ジークウルネ「……菫少将の心はどうやら、ここにあるみたいです。 行って見ますか?姉さん?」

フロースヒルデ「そうね…… 他に手掛かりも無いし、そうしましょうか。

みんなも、それでいいかしら?」

 私の言葉に、皆もうなずいた。


フロースヒルデ「進路を北東に! 目的地、鬼之寝床岩!!




鬼之寝床岩

フロースヒルデ「ここね……菫少将の心があるって所は」

ジークウルネ「ええ…… 大体、あそこに立っている女の子の傍あたりから、反応が出ています」

フロースヒルデ「そう…・・・」



女の子「あの……そこの方」

 突如、女の子の方から声をかけてきた。

ミュー「うん? どうかしたのか?」

女の子「おはな……買ってくれませんか。 一束100Gです。

病気のお母さんを治すためにも、是非とご協力をお願します」

ミュー「そうか…… じゃあ一つもら……」

ジークウルネ「ミューさん…… ちょっと待ってください」

 私の脇にいたジークが、ミューささやきかけた。

ミュー「ん? どうしたウルネ?」

ジークウルネ「私の見たビジョンでは…… この女の子……敵の手先みたいです。

くれぐれも、油断しないでください」

女の子「ぬ…… 貴様、わしの『はな』が買えぬと申すのか……」

 女の子は突如、毒づいた。 そして、次の瞬間、女の子の体が光って……


異形のバケモノ「『はな』は『はな』でも、鼻糞の『鼻』じゃっ!!

お前らを殺してやるっ!!


 この世の物とは思えない、異形のバケモノに姿を変えた。

フロースヒルデ「げっ…… なによこいつは……」

ジークウルネ「!!」

 当然、私もジークも精神的ダメージを受けて、その場に立ち竦んでしまった。

 だが……


ミュー「そうかい……

じゃあこいつは『おはな』の代金だ!! 受け取りなっ!!




 ミューは精神的ショックより怒りの感情の方が強かったのか、即座にミサイルを何発も異形の者に発射した。

異形のバケモノ「ま、ちょっとまって…… 話せばわ……」


異形のバケモノ「GYAAAAAAAAA!!!!

 ミサイルの直撃を何発も受け、異形のバケモノは消し炭と化した。

ミュー「……ったく何なんだよ、この展開は。 カオスにも程があるぞ」

フロースヒルデ「あたしに聞かないでよ、ミュー……

それよりも早く……菫少将の心を回収しないと」

 と、その時である。

 ふと、近くになんだか懐かしい気配がした。

フロースヒルデ「この気配…… 菫少将!?」

菫少将「う……ん……」

 次の瞬間、それまでディバックの中でぐったりしていた菫少将が目を覚ました。



菫少将「あれ……私、どうしてここに?」



フロースヒルデ「良かった……気がついたのね、菫少将」

菫少将「はっ…… その声はフロース艦長…… どうしてそんな姿に?」

フロースヒルデ「『マカマカ』団っていう秘密結社に嵌められてしまってね…… で、その際元帥や菫少将を巻き添えを食らって廃猫になってしまったのよ。

で、廃猫になってしまった元帥達を助けるために、今彼女達の『心』を探している所」

菫少将「そうですか…… で、元帥閣下は!?」

フロースヒルデ「元帥の心は、これから回収しに行く所よ。 ……ジーク、ダウジングをお願い」

ジークウルネ「わかりました。姉さん」

 ジークは世界地図を広げ、『ダウジング』をはじめた。

 暫く後、ジークの持つ振り子が…… フシギ団の砦沖北東部の海上を指した。

ジークウルネ「え……海の上!? 何で、こんな所に元帥の心が?」

菫少将「ウルネ様…… 地図にはなにも表示はいませんが……

帝国空軍情報部の得た情報では、その位置にはまだ未発見の島が存在します」

ジークウルネ「未発見の島……? 何でそんな所に元帥の心が?」

菫少将「それは私にもわかりませんが…… 情報部の報告では、この島には最近、謎の秘密結社が大規模なアジトを構えているとか。

行くのであれば、それ相当の危険は、覚悟しなければならないでしょう」


ミュー「だが、行かない事には元帥を助けられないだろう。  もう、あたしらに『撤退』という選択肢は無いんだ」

フロースヒルデ「そうね…… じゃあみんな、急いでフレイヤに戻りましょう」

 私達はフレイヤに戻り、一路元帥の心があると思われる、絶海の孤島へと向かった。




絶海の孤島・謎の組織のアジト


ミュー「敵影無し……か。 こっちは案外あっさり潜入できた、フロース」

フロースヒルデ「ええ……」

 元帥の心があるという絶海の孤島へは、予想より遥かに簡単に上陸する事が出来た。

 そして、アジトへの潜入も、実にあっさりと成功した。

 潜入班はとミューとジーク、それに藪先生の3人である。

 私は万が一の時に備えフレイヤに残っているため、ミューとは通信を使って会話している。

 ここまで、敵の迎撃は全く無い。

フロースヒルデ「でもミュー、潜入作戦中に堂々と通信機なんか使って大丈夫なの?」

ミュー「何、『量子暗号』っていう、絶対に盗聴不可能なシステムを使っているから大丈夫だ。

また通信機自体にも、電波が発信された事自体をカモフラージュする機能をつけてある」

フロースヒルデ「そう……ならいいけど。 じゃあ、通信ひとまず終わるわ」

ミュー「了解」

 ミューはここで、通信機のスイッチを切った。

ミュー「みんな……ここまではあっさりいったが、これからが本番だ。 くれぐれも油断するんじゃないぞ」

ジークウルネ「はい」

Dr・藪「了解だ」



地下2F


ジークウルネ「あ、ミューさん。藪先生。 あそこのゴミ箱から……元帥の反応を感じます」

ミュー「そうか……って、しっ…… 誰か来る」


警備兵?「……」

 警備兵らしき男は元帥の魂があると思われるゴミ箱の前に立ち、タバコをふかし始めた。

 中々、どこうとしない。

ミュー「いらいらするな…… 早くどうにかしないと、ここにも見張りがくるかもしれない」

 流石のミューも、苛立ちの表情を見せ始めた。


Dr・藪「何なら…… ひとっ走りして奴を始末してこようか?」

 藪先生の方は相変わらず冷静さを失わず、ミューに思いがけない提案をした。

ミュー「始末って…… 別に始末するのは構わんが、バレずに出来んのか?」

 ミューが怪訝そうな表情で言い返す。

Dr・藪「まあ、見ていてくれたまえ」

 藪先生は自信たっぷりな表情で、スキル石「クローキング」を使用した。


警備兵「ふぅ…… 会議抜け出してのタバコは美味いね……」


警備兵「……!! き……」

SE:プス(延髄に殺し針が刺さる音)

 声も倒れる音も立てずに、警備兵は絶命した。

 そしてすかさず、藪先生は警備兵の死体を、近くにあった大型のゴミ箱(蓋付き)に静かに突っ込んだ。

Dr・藪(……人の気配は無い。 もう、こっちに来ても構わないぞ)

 通信機で、藪先生は物陰に隠れているミューとジークを呼んだ。


ミュー「お見事。 随分と手際がいいな……

お前さん……医者になる前はアサシンでもやってのか?」

Dr・藪「私の父親が腕利きの仕掛人でね。 幼い頃から、暗殺術の教練は一通り受けていたのだよ」

ミュー「仕掛人? 何だそりゃ?」

Dr・藪「おっと、これは失礼……」


Dr・藪「エミルやタイタニアの世界はどうだか知らないが…… ドミニオンの世界には、一口に暗殺者といっても2つの種類が存在する。

まず、お上からいわゆる『殺しのライセンス』をもらい、堂々と暗殺活動を行うのが『アサシン』だ。

彼らの主な標的は、凶悪犯罪者やマフィアといった連中だ。 ドミニオンの世界の場合、この手の犯罪者は殺しても罪にはならないからね」

 藪先生はここで言葉を区切り、続ける。

Dr・藪「そして、お上から殺しのライセンスを貰わず…… ドミニオンの世界でも非合法な『殺し』を行うのが『仕掛人』……

彼らの場合、法の下で堂々と暗殺する事の難しい…… 汚職官吏や悪徳商人といった連中が主な標的となる。

私も、医大生時代や大学院時代は…… この『仕掛人』として活動し、学費や生活費を稼いでいたんだよ。

何せ一回の仕事で、大体3M近くもらえたからね」

ジークウルネ「え…… 先生が、殺し屋の仲間だったなんて……」

 思いがけない藪先生の告白に、ジークはショックを受けていた様子だ。

Dr・藪「何、ウルネ君。 私はこの世に生きていては為になら無い奴だけを選んで始末してきたつもりだ。

善良な市民を殺めた事は一度も無いし…… 第一それは、仕掛人の『掟』にも反する事だしね」

ジークウルネ「そうですか…… よかった……」

 藪先生が善良な市民を平気で暗殺するような残忍な人物で無い事が分かり、ジークもひとまず安心したようだ。

ミュー「なるほどね…… あんた、医者にしてはどうも目つきがキツイから、何かあるなとは思っていたが……

まさか殺し屋だったとはね」

Dr・藪「隠していた事は詫びる。 だが、履歴書に堂々と『殺し屋やってました』なんて事は、まともな神経を持った奴なら書けないだろう」

ミュー「まあ、それは確かに……」


ジークウルネ「でも先生。 もう隠し事はこの位にしてください。

 殺し屋さんなんて、このエミルの世界では普通に生活していますし……

 それに私達は同じフレイヤの乗員として、運命を共にする者なのですから……」

Dr・藪「分かったよ、ウルネ君。 フロース君には、後で私の裏の顔については明かしておくよ」

ジークウルネ「そうしてくれると、助かります」

ミュー「で、話が逸れちまったが、そろそろ元帥の心を……」

 その時、ミューの周りに、何やら懐かしい感じがした。

ミュー「この感触…… まさか、元帥か」


元帥「元帥ちゃん大復活〜♪

 ジークのディバックで寝ていた元帥が、元気になって復活した。

ミュー「ばか、元帥。 声がでかい。

今ここがどこかだ分かってるのか? 敵のアジトだぞ?」

元帥「分かっているよ、そんな事。 で、どうするのこれから? 帰るの?」

ミュー「素直に帰ってもいいが…… ちょっと、資料室に寄ってから帰ろうと思う」

元帥「へ? 何で?」


ミュー「実はな、今回の一件とは別に、うちらと友好関係にあるミナファさんの知り合いが何かの呪いにやられちまったらしくて……

危篤状態らしいんだ。

で、今ミナファさん達と協力してその知り合いを治療する為の資料を、探している所だ」

Dr・藪「そうか……まあ、貰える資料は出来るだけ貰っておくに越した事はない。

 あと、今度そのミナファ女史の知り合いとやらを……ちょっと診させてもらって構わんかね?」

ミュー「ああ、かまわない。 というより、こっちからお願いするよ。 先方には、あたしから話をつけておく」

Dr・藪「そうか……

……話を戻すが、資料室潜入&脱出にかけられる時間は、そんなには残っていない。

もし敵の警備兵に見つかったり、さっき私が始末した警備兵の死体が見つかったら……アウトだぞ」

ミュー「わかってる。 資料室の場所はさっき階段の所に館内の地図があったから、把握している。

後は……」

 ミューは洋服の内ポケットから、何か粉末がはいった袋を取り出した。

ミュー「このアジトの各所に、この極小盗聴器『R-TYPE』を仕掛けておこう。

ついでにこのアジトがどこの組織の物なのか、突き止めておきたい」

Dr・藪「了解だ。 さ、時間は貴重だ。  そろそろ、行動を起こすとしようか」

 ミュー達は資料室のある3Fへと向けて、階段を密かに上り始めた。



翌日未明 戦闘庭フレイヤ



フロースヒルデ「やったー♪ やっぱり元の体は落ち着くわね〜」

 ミュー達が帰還した後、私は藪先生の治療を受けて無事に元の体に戻る事が出来た。

 そして、謎の孤島からの脱出も、特に迎撃を受けることなく成功した。

 恐らく敵はまだ、私達の潜入に気がついていない模様だ。

ミュー「良かったな、フロース。 あたしもほっとしたよ」

 ミューも心なしか、ほっとした様子だ。

ジークウルネ「それにしても…… あのアジトって、一体何だったでしょうかね?」

ミュー「さあな…… じきに、アジトに残してきた『R-TYPE』が何か拾って来るだろう。

それを待つしか……」

SE:ピィーーーッ

ミュー「む…… 言った先から反応があったようだ。 今、スピーカーに繋げる」

声「うわーっ!! マカマカ総統が…… マカマカ総統がゴミ箱の中で殺されてる……!!

これは、誰かの陰謀か!? もう、我らマカマカ団もお終いだ……

ああ、もう一度やり直す事が出来たらなんんとかなるのに……


一同「……」

 何と、あの謎の基地は、例のマカマカ団のアジトだったらしい。

 しかも……


ミュー「藪…… あんたが殺した警備兵…… あれ、マカマカ団のボスだったらしいな」


Dr・藪「そのようだね。 まさか彼が、かのマカマカ団の棟梁だったとは」

 流石の藪先生も、びっくりしたような表情を見せた。

元帥「まあ、結果的にマカマカ団の棟梁を倒せたんだがいいじゃない、二人とも。 結果オーライだよ、結果オーライ。

ところで、杏ちゃん」

 不意に、普段温厚な元帥の表情が厳しくなった。


杏中将「は、はい。何でしょう?元帥」

 元帥の厳しい目線の先には、さっきまで私が憑いていた杏中将の姿があった。

元帥「あんまりこんな通達するのは、あたしとしても本意じゃないけど……

今回の一連の騒動、杏ちゃんがマカマカ団に捕まったりしなければ……フロースちゃんや菫少将まで巻き込む事は無かったのも、また事実だかね。

いまから処分…… 言い渡すよ」

ジークウルネ「え…… 元帥、杏さんに何を……」


菫少将「……ジーク様。 言いたい事は分かりますが、これは我々帝国軍人としてのけじめ……

故にいかにジーク様といえど、今回だけは口出し無用にお願します」

 いつになく厳しい表情で、菫少将は言った。

フロースヒルデ「……ジーク。  元帥や菫少将の言う通りに……してあげなさい」

ジークウルネ「……わかりました。 姉さんがそう言うのなら」

 完璧には納得していない様子であったが、とりあえずジークは引き下がった。


元帥「降格とかにはしないけど…… 向こう4週間、謹慎を命じるよ。

謹慎中は……どうしようか?」

菫少将「どうしようか……と申されましても、元帥……」

Dr・藪「ああ、元帥。 僭越ながら、杏君の処分について提案したい事がある」

元帥「提案? な〜に?」


Dr・藪「杏君を私の元で、助手として働かせてはもらえないだろうか?

私もドミニオンのファーマーだから、背中の翼が邪魔で物があまり持てなくてね……

ネコマタの助手が、丁度欲しかった所なんだ」

元帥「OK。 じゃあそれでいいよ。

じゃあ杏ちゃん。 謹慎期間中は藪ちゃん所でコキ使ってもらうって事で、依存は無いね?」

杏中将「……ございません」

 どうやら、杏中将の処分はたいした事は無いみたいだ。

ジークウルネ「ほっ…… よかった……」

 ジークも、胸をなでおろす。


フロースヒルデ「後は……長官達を元に戻せば、この事件は晴れて解決ね」

元帥「そうだね。 もっとも……」

フロースヒルデ「もっとも?」


元帥「長官達のミジンコ姿が外部に流出している可能性は、
はっきり言って大だけどね
。」

フロースヒルデ「そうね……。まあでも、そうなったらそうなったで……

自分達がどれだけ普段情報漏えいに気を使ってないか、長官達には痛い目みて体でわからせて上げましょう。

それになによりも……」



フロースヒルデ「別に私達は長官のミジンコ姿が外に漏れても、
困るわけでも何でもないしね


 

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