日記20回(2)

軍艦島


ホワイト「……軍艦島でスカウトギルド関係者っていったら、この人くらいしかいないわね」

 私は軍艦島にて、スカウトギルドの関係者を見つけました。

 といっても、スカウトギルドへの入門試験の時、私は軍艦島へ飛ばされましたので……

 この人とは、全くの初対面という訳ではありません。


ホワイト「ええと……すみません。 アサシンの転職試験の件で……」

 と、私がいいかけたその時です。


スカウトギルドメンバー「二人はっ!!

 唐突に、スカウトギルドの職員さんは意味不明な言葉を発しました。

 ですが、これは恐らく、スカウトマスターの言っていた合言葉の片割れか何かだとすぐ気がつきました。



ホワイト「プリキュア!!

スカウトギルドメンバー「よし、正解だ。 こいつをもっていきな」

 というなり、スカウトギルドの職員さんは薬を渡してくれました。

スカウトギルドメンバー「よし、じゃあ次の合言葉のヒントを教えよう。

ヒントは『札幌名物』だ」


ホワイト「札幌名物ですか…… 了解です。

では、私は次の薬をもらいにいきますので、これにて失礼します」

スカウトギルドメンバー「ああ。 この試験は長ったらしいから、気長にがんばるといいよ」

 スカウトギルドの職員さんの激励を背に、私は次の目的地……大陸洞窟前まで向かいました。



大陸ダンジョン前


スカウトギルドメンバー「……なあ、唐突だが『カレーの理想的な食し方』って、何だと思う?」

 大陸D前のスカウトギルド職員さんは話しかけるなり、いきなりカレーに関する質問をしてきました。

 恐らくこの質問は、合言葉の前振りであると思われます。

 そして、前の職員さんが言っていた『札幌名物』というヒントを組み合わせれば……


ホワイト「札幌名物『スープカリー』

 これ以外に、選択肢はありません。

スカウトギルドメンバー「ん、正解だ。 やっぱカレーはスープカリーに限るよな……

他の食し方など、邪道もいい所だぜ…… まったく、どういつもこいつもカレーを邪道な食べ方しやがって……」

 スカウトギルドメンバーの職員さんは、カレーの事に関して愚痴り始めました。

ホワイト「あ、あの…… そろそろお薬をいただきたいのですが」

スカウトギルドメンバー「ああ、すまんな。 ほらよ、薬だ」

 というなり、職員さんは薬を渡してくれました。

スカウトギルドメンバー「さて、最後に次の合言葉のヒントだ。 ヒントは『何も入れるな』、だ」

ホワイト「何も入れるな……ですか。 了解です

では、私はこれにて」

 そして、私は次の目的地へと向かいました。



ノーザリン岬


闇の商売人「ふふふ……今日もカモが一杯だぜ。 ノーザン方面の許可証売っている露店は、いつも出ているとはかぎらないのよ」

声「あ、あの……闇の商売人さん」

闇の商売人「ん? 何かね? 許可証が欲しいのか?」

声「いや、そうじゃなくて……」


ホワイト「コーヒーはブラック

闇の商売人「げ……なんでお前、合言葉を知ってるんだ? まだ俺は何も言ってないぞ」

ホワイト「言うも何も、その格好を見れば大体察しが付きますよ、『グレ』さん」

グレさんは以前(日記第16話三章参照)、私にスカウトとしての稽古を付けてくれた先輩アサシンで、無類のブラックコーヒー好きです。

闇の商売人「グレ? 生憎だが、俺はそんな名前じゃねえぞ。

ほら、薬をやるからとっとと失せた失せた」

 闇の商売人さんは厄介払いするように、私に薬をくれました。

闇の商売人「あ、そうだ。 次の奴のヒントは『涼しくなる方法』かな。 じゃあ、頑張りなよ」

ホワイト「はい。 それでは、失礼します」

 闇の商売人さんにわかれをつげ、私は採集目的地・鉄火山へ向かう事にしました。

と、そこで……


アンブレラ「トントン拍子、なのであるな」

 育成のために連れまわしていたアンブレラちゃんが、声をかけてきました。

ホワイト「そうですね…… アサシンへの転職試験って言うから、誰かを暗殺するのかと思いましたが……

思ったより簡単ですね」

アンブレラ「でも、気をつけたほうがいいかもしれないのである。 こういうやたら簡単そうな試験に限って、どこかに落とし穴がある物である」

ホワイト「そうですね。 気をつけておきます」

アンブレラ「それとホワイト嬢。 我輩に対して敬語を使わなくていいのである。 我輩は故あってノレン少年の所に居候になっている身ゆえ」

ホワイト「……わかったわ。 じゃあ、用事も済ませた事だし、さっさと次の目的地『鉄火山』に向かいましょう」

アンブレラ「了解なのである。 我輩としてもバウやボーラーベアといった雑魚モンスターの相手も、もう飽きてきた頃合なのである」

 確かに、バウやボーラーベア程度のモンスターに、アンブレラの相手を務めるのは少々荷が重すぎます。

 アンブレラさんも、何だか物足り無そうな表情をしています。

 そして、私とアンブレラちゃんは一旦『時空の鍵』を使ってアクロポリスに戻り、そこから陸路、アイアンサウスは鉄火山へと向かいました。




鉄火山


ミズチ「…… 暑い。 この暑さ、どうにかならぬ物か……」

声「あのー すみません」

ミズチ「ん? なんだい?」


ホワイト「アサシンの転職試験の件で来たのですが…… 薬、いただけないでしょうか?」

ミズチ「ああ、アサシン転職志望の子ね。 今から出す私の質問に答えられれば、薬を上げるよ。

……この暑さを凌ぐには、どうすればいい?」

ホワイト「この暑さを凌ぐには……ですか」


ホワイト「ノーザン方面に行かれてはどうでしょう? あそこはとっても涼しいですよ」

ミズチ「ノーザンね…… あそこは涼しいというより寒いような……」

ホワイト(!! しまった!!)

 ここで、私は始めて致命的なミスを犯した事に気がつきました。

 私の故郷はマーズ連邦内でも1・2を争う極寒の惑星。

 なので、普通の人が寒いというノーザン方面の気候も、私にとっては十分『涼しい』部類にはいります。

 しかし、一般の人には、ノーザンはとても寒い所である事を、不覚にも失念していました。


ミズチ「……散れ」

 ミズチさんは怖い目つきで私を睨みつけ、こう言いました。

ホワイト「え…… ミズチさん、薬を……」

ミズチ「何度も言わせるな。……散れ」

 この瞬間、私は状況をようやく理解出来ました。

 要するに、私は合言葉を間違えてしまった訳です。

 ……先輩、フレイヤのみんな、ごめんなさい……


        お  ち
 私、不合格ちゃった……


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