日記28話(4)



一同「……」



藪「この番組で言っていた事をもう一度おさらいすると……

まず、私の祖国である『南州列藩同盟』は、DEMとアクロニア王国の出先機関『南州公方』との戦に横槍を入れる事によって双方とも潰し……

漁夫の利を得た形で、ドミニオン・アクロニア王国から独立を果たした。

 当然ドミニオン・アクロニア王国の本国政府は激怒し、大規模な討伐軍を派遣した訳だが……」


ホワイト「その隙を突いて、DEM達の大群がドミ界のアクロポリスを襲って……制圧しちゃった訳ですね」

藪「その通り。

このような歴史的経緯もあり、アクロニア王国の国民の中には『列藩同盟は正々堂々と戦わず、騙まし討ちによって国を盗んだ不届き者』とか……

『アクロポリスが落ちたのは列藩同盟の軽挙妄動のせいだ』とか……

そんな風に思っている輩が大量にいる。

 ……これが、私の祖国『南州列藩同盟』が、ドミニオン・アクロニア王国の連中に嫌われている大まかな理由だ」


ジークウルネ「……その手の歴史問題となると、そう簡単には解決できそうもないですね。藪先生」

藪「ああ。 少なくとも我々の世代の間は、両者が『これからは仲良くやっていきましょうね』と手を取り合う事はまず無いだろう。

さて……」

 ここで藪先生は、ふいにソファーから立ち上がりました。


藪「皆に一つ、お願いしたい事がある。

……お願いしたい事というのは他でもない。 遊び半分で『天まで続く塔』経由で、ドミ界に行ったりしないで欲しい。

理由は……今更一々説明するまでも無いだろう」


ミュー「……藪の言わんとしている事は、よくわかった。

だが……あたしら『未開惑星調査員』としては、遅かれ早かれ、ドミ界での現地調査を上から命じられる事になるだろう。

藪。仕事でドミ界に入るのも、ダメか?」

藪「『天まで続く塔』経由……というのであれば、ダメ出しせざるを得ないな」


フロースヒルデ「『天まで続く塔』経由がダメというのであれば……他のルートなら良いという事でしょうか?

例えば、藪先生の母国経由とかなら……」

藪「ああ、それは問題ないし、むしろ私はドミ界入りにはそのルートを進める。

何故なら『天まで続く塔』以外のルートであれば、PKと並んで悪名高き『次元転生』……

つまり、エミル・タイタニア・ドミニオンの3種族のLvを強制的に1にしてしまう『呪い』に罹らずに済むからね」

ミュー「なるほど……」

ホワイト「あ、でも先生……」

藪「? 何かね、ホワイト君」


ホワイト「藪先生の母国とか、天魔界(出典:ECO家の一族)を取材するのであれば、別ルートで行くのがベストだと思いますが……

問題は、旧ドミニオン・アクロニア王国(現レジスタンス)を調査しないさい……って言われた時です。

ここ最近、レジスタンスの皆さんは、DEMとの戦闘に備えて種族関係無しに戦力を募集していると聞きますし……」

藪「それに紛れて、レジスタンス内部に潜入するつもりなのかね?」

ホワイト「はい。 私なりに調べてみたんですが、これが一番、目立たずにレジスタンス内部に潜入する方法ですから。

潜入調査における最大の敵は『目立つ』事…… 藪先生なら、その辺りのことはご存知ですよね?」

藪「うむ…… そう言われると、反論しづらいな」


藪「だが、いくらなんでも何のサポート体制も無しに、君を敵地に放り込む訳にはいかん。

こっちでも色々と準備したい事があるから…… その準備が済むまではたとえ上司から命令されたとしても、レジスタンス潜入は待ってもらいたい。

それと、用事が済んだらさっさとエミル界に戻ってくる事。 いいね、ホワイト君」

ホワイト「はい、了解です」


フロースヒルデ「さて……何だかおなか空いちゃったから、みんなお夜食にしましょう。

藪先生、済みませんが厨房を貸していただけないでしょうか?」

 フロース艦長の『厨房を貸して』という一言に、周囲は凍りつきました。

 このサイトを長く見ていただいている人ならご存知の通り、フロース艦長は料理の下手さについては宇宙規模でも屈指の実力者だからです。

藪「……料理の練習をするのは一向に構わんが、だからといって厨房を貸すわけにはいかない」

フロースヒルデ「え……でも厨房以外で、どこで料理をしたら?」

藪「最近この庭に新設した……」


藪「隔離設備の整った、ウィルス研究用実験室で調理してくれ

勿論、料理が出来たら試験機にかけて、毒性が無い事を多方面から検証。

それに合格しない限りは、君の料理をテーブルはおろか、隔離施設から出す事も認めない」

 悪戯っぽい笑みを浮かべながら語る藪先生の前に、フロース艦長は返す言葉もありませんでした。



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