日記29話
某月某日 戦闘庭フレイヤ居住区・居間
AM8:00
ウェンディー「みなさんお早うございます。 『カサネットたけだ』 TVショッピングの時間がやってまいりました。
今回の担当は『カサネットたけだ』代表取締役社長の、私、『武田』がお送りします。
さて、今回ご紹介します商品は……こちらになります」
武田社長「知識書『石動仲の一生(※)』でございます」
(※)言うまでも無く、このアイテムはECOに実在するアイテムではありません。
そして仲さん、ごめんなさいです。
武田社長「この書物……見ての通り、ただの本系装備ではありません。
まず、この本を装備すると『知略』…… ECO流に言えば『INT』に+5の補正がかかります。
+5のステータス補正を持つ装備というだけでも…… 前代未聞の高性能アイテムだと思います。
でも、この商品の魅力は、それだけに留まらないんです。
先ほどの商品案内の画面に……」
武田社長「↑のような表示があったかと思います。
この『戦法』、昨今流行の言葉で言えば『未実装スキル』と呼ばれる物であります。
この本を装備しますと…… 『捨て奸(すてがまり)』と呼ばれる未実装スキルを、誰でも習得する事が出来ます」
武田社長「『捨て奸(すてがまり)』といいますのは、戦国時代の九州の大名、島津家によって使われた戦法であります。
その戦法の内容としましては……
1.殿(しんがり)の兵を逃走する道筋に沿って数人づつ点々と銃を持った狙撃手として伏せさせておき、追ってくる敵軍の指揮官を狙撃する。
2.狙撃後は槍で敵軍に突撃する。 こうして時間稼ぎをする間に本隊を撤退させる。
(出典:ウィキベディア)
といった具合の内容であります。
狙撃手は文字通り『置き捨て』でありまして……生還率の殆どない壮絶な戦法であります。
誠の薩摩隼人か、さもなくば殺されても何度でも復活可能な『ひふへ』でなければ、務まるものではありません」
武田社長「もっとも、この本で習得可能な未実装スキル『捨て奸』は、本来の意味でのそれとは効果が異なります。
詳しい原理の説明はとても難しくなるので省かせて頂きますが……
このスキルは、『鉄砲隊を率いた時に使うと、一瞬にして1000人以上の敵兵を瞬殺させる』効果を持っております。
どれだけの敵兵を一度に殺せるかどうかは、使用者の『武勇(STR)』、並びに配下の兵が装備している鉄砲の性能に影響されます。
なので一軍を率いる機会の多い、軍関係者にもお勧めできる商品となっております」
武田社長「しかし、いくらINTが+5され、未実装スキルが憶えられるといっても……
この本を装備した代償として、メインの武器を外さなければならない事になったら意味をなしません。
特にアーチャー系職業の場合、本装備を持つと弓がもてなくって『でくのぼう』になってしまう事は、語るまでもありませんよね。
しかし皆さん、その点についてはご安心下さい。 この本、エンド本等の通常の『本』装備とは異なりまして……」
武田社長「なんと『ペット装備』扱いなんです。
これはこの本を装備しつつ、弓を持ったりメインの杖を持ったりする事が可能である事を意味します。
なので、SU系の人たちだけでなく、アーチャー系の人たちも安心してこの本を使うことが出来ますので、安心してお買い求め頂けます。
もっとも特殊仕様のペット装備でありますので、この装備を『成長』させることは出来ません。 予め、ご了承下さい。
あともちろんこの本、どの職業・どの種族でも装備可能です」
武田社長「さて、これだけの高いINT補正や未実装スキル習得可能な装備となると……
どんなに少なく見積もっても10M以上するんじゃないか……と心配なされるお客様も多いかと思います。
背負い魔ブーストなどは、相場が100Mを超えて久しくなっております(2008/6/6日現在 クローバー鯖の情報です)。
しかし皆さん、ご安心下さい。 我が『カサネットたけだ』はこれだけの装備を……」
SE:デン!!
武田社長「税込み価格900Kにてご提供(※2)いたします!!
もちろん、分割払いもOK。 金利手数料は、『カサネットたけだ』が負担いたします」
(※2)代金を本当に当方まで送ったりしないうよう、お願します。
武田社長「さあ、お申し込みは今すぐ!!」
テレビからの音「フリ〜ダイヤル***の###の&&&&〜♪」
フロースヒルデ「軍事用の未実装スキルを憶えられて900Kか…… よし、買おう♪
さて、早速電話を……」
元帥「ダメだからね!フロースちゃん!!」
フロースヒルデ「わっ!! ちょ、ちょっと元帥……いきなり沸いて出て一体何なのよ」
元帥「どうもこうも無いよ。 ブレマスのフロースちゃんに、INT+5の補正なんて要らないでしょう。
それに未実装スキル『捨て奸』にしたって…… 空戦部隊所属のフロースちゃんに、鉄砲隊を指揮する機会なんてそうそう無いでしょうが」
フロースヒルデ「うー。 でもよ元帥。『備えあれば憂い無し』って言うじゃない?
いつ何かの拍子に、鉄砲隊の指揮を任されるかもしれないし……」
元帥「まあ、そう言われればそうだけど…… でもね、フロースちゃん」
元帥「そこのTVを4.8Mで衝動買いしたのは、何処の誰?」
フロースヒルデ「う……ごめんなさい、私です。
でも、このTVは個人的に所有していた、余剰のウリエガノフ+自分のポケットマネーで買ったものだから……
フレイヤのお金(貯金)には一切、手をつけてないわよ」
元帥「……貯金に手をつけて無くとも、そのお陰で今フロースちゃんの財布はやわ羽のように軽くなっているんでしょ?
フロースちゃんの後見猫として、そんな状況で900Kもの大金を使わせる訳にはいかないよ。
さ、衝動買いしている暇があったら、早く狩りにいったいった」
フロースヒルデ「……はぁい」
次へ
BACK