日記第四回(後編)

今回の日記担当:フロースヒルデ


アクロポリス・アップタウン上空・バー「光」

元帥「バー「光」に来るの、一週間ぶりだね〜」

トンカから戻って来た私は、元帥を伴ってそのまま真っ直ぐになじみのバー「光」に直行した。

 しかし、「光」には入廷制限はかかっていなかったものの、店の看板には『準備中』というカードが掲げられていた。

元帥「あ、フロースちゃん。ポストの所に封筒が挟まっているよ」

 元帥の指差す先には、確かに封筒が挟まっている。

 そして、その紙の表面には「フロースさんへ」という文字がしたためられていた。

「どうぞ、中へお入り下さい」

 封筒の中身の紙切れには、ただそれだけの文章がしたためられていた。



零斗「やあフロースさんこんにちわ。好きな所に座って」

 手紙の指示に従い、店の中に入った私。

 出迎えてくれたのは、このお店のマスター、零斗さん。バー「光」のある「アップタウン・タイニー通り商店街」の商工会長も勤めているそうだ。



フロースヒルデ「失礼します」

 とりあえず、カウンターのいつもの席に座る私。

零斗「ちょっと待ってくださいね。今、いつものお出ししますので」

 この店の名物カクテル「フラワー・ライト」は、この界隈で美味しいと評判であり、週刊誌でもたびたび紹介される程だ。

 もちろん、私や元帥もこのカクテルが大好きである。

元帥「あ、マスター。私のカクテルにはお砂糖入れるだけ入れておいてね」

 元帥が零斗さんに無茶な要求をする。

零斗「わかりました、元帥」

 零斗さんは嫌な顔一つせず、元帥のリクエストに応じた。

 何故なら元帥が砂糖入りカクテルを注文するのは、今日が始めての事ではない。

 というより、来るたびに必ず注文するので、マスターの方ももう慣れっこになってしまっている。



 ……やがて、バー「光」自慢のカクテル「フラワー・ライト」が運ばれてきた。

フロースヒルデ「所でマスター、私たちと打ち合わせたい事というのは……?」

零斗「このタイニー通り商店街に店を構える、『家具の店 ローザ・アルバ』はご存知ですよね?」

零斗さんの顔から笑みが消える。

フロースヒルデ「ええ、知っていますよ。でも、それが何か?」

零斗「実はですね……。店主のローザ・アルバさんがファーイーストシティにおいて、何者かに拉致されてしまったらしいのです」

フロースヒルデ「え……

 一瞬、私は零斗さんの言っている事が理解できなかった。

 しかし、零斗さんの表情は真剣で、とても冗談を言っているようには見えなかった。

フロースヒルデ「ローザさんが拉致られた?」

零斗「はい。街で黒頭巾を被った男二人に襲われて、街の北側へと連れ去られたらしいのです」

フロースヒルデ「黒頭巾の男……ですか」

零斗「ええ。ファーイーストで黒頭巾を被った男達となると、あの地方で暗躍する秘密結社『フシギ団』の構成員である事が第一に考えられます

彼らは団内の掟により、常に黒頭巾をしていないといけないそうですからね」

 「フシギ団」とは、ファーイースト共和国を根城にする秘密結社である。 詳しい活動内容・目的等は不明。

 ただ、彼らの本拠地がファーイーストシティ北部にある古い砦にあるという事は判明しており、一部の冒険者等はよくそこに出入りしているようだ。



元帥「『フシギ団』が犯人だとはとても思えないよ、マスター、フロースちゃん」

 その時、元帥が私とマスターとの会話に割って入った。

フロースヒルデ「どういう事?元帥」

元帥「あたしの知る限り、「フシギ団」は典型的な『ショッカー型秘密結社』と違って……

無意味に子供を襲ったり、貯水池に毒を入れたり、構成員に『イー』とか言わせたりする所じゃないよ。

むしろ、最近は地元の軍と協力して、海賊や山賊退治に汗を流している所。

もっとも、『フシギ団』という所は多くの盗賊団・海賊組織と抗争を繰り広げている所だから……、軍と協力でもしなければ、とても戦線を

維持できないという事情もあると思うけどね」

 元帥の表情は怖いほど真剣であり、私もマスターも一瞬、返答に詰まった。

 元帥は続ける。

元帥「ローザさんをさらったのがもし『フシギ団』だとしたら、犯罪組織として頼みの綱である軍からも攻撃される事になり……

それこそ自分の首を締め付ける行為になるよ。

 あたしが思うに……。恐らく、真犯人は『フシギ団』と長年対立している海賊達か何かだと思う。

 犯人が『フシギ団』の象徴である黒頭巾をしていたのも、恐らくは犯行を『フシギ団』の仕業と見せかけるため。

 ローザさんをさらった罪をフシギ団に着せて一番得をするのは、他ならぬ『フシギ団』との抗争相手だろうからね」

零斗「……流石は元帥閣下、見事な推理です。

我々タイニー通り商店街商工会も、軍とは別に調査を行っていたのですが……、我々の行き着いた結論も、まさにそれです。

で、我々もその後、フシギ団との抗争相手のアジトをしらみつぶしに調査してみたのですが……」

 ここで零斗さんは言葉を区切り、続ける。

零斗「つい先ほど、ローザさんが捕まっている場所が判明しました」

フロースヒルデ「ええ!?本当ですか? その場所は……」

零斗「場所は『海賊の館』。長年フシギ団と抗争を続ける、パイレーツどもの本拠地です」

フロースヒルデ「海賊の館……」

 海賊の館といえば、菫少将の情報ではトンカの大工場から『飛空庭のデッキ』を盗んだ犯人がいる所だ。

 デッキだけならいざしらず、ローザさんまで拉致るとは……許すまじ、パイレーツども。

 私がそう色々と考えていると、零斗さんが私の方に向き直った。



零斗「そこでフロースさん。戦闘庭の艦長である貴女にお願いしたい事があります」

フロースヒルデ「お願いしたい事?」

 零斗さんには以前から、私が戦闘庭乗りである事は明かしてある。が、それを理由に依頼をしてくるのは始めての事だ。

零斗「ええ。といいますのも今、『海賊の館』のある『海賊の島』には、通常の4倍近い数の海賊どもがたむろしていまして……

レベル80台の私でも、陸路では近づくに近づけない状況なのです。

何故ここまで海賊の数が増えたのか、詳しい事は不明ですが…… 恐らくは、近いうちにフシギ団と雌雄を決するためかと思います」

 海賊団の目的が何であれ、今の私達や零斗さんにとっては大量の海賊どもは邪魔以外の何者でもない。

 しかし、たたでさえ強敵である海賊どもが4倍もいるとなると、白兵戦で制圧するのは難しいのは明白である

 となると、私に残された手札は一つ。

フロースヒルデ「私の艦を用いて、海賊島に艦砲射撃を行えと」

零斗「その通りです。無論、報酬はお支払い致します。

どうです、フロースさん。この依頼、請けてくれますか?」

 零斗は確認するが、私と彼女の目的が同じ所にある以上、答えは一つしかない。

フロースヒルデ「わかりました。その依頼、お請けしましょう」

零斗「ありがとうございます、フロースさん。詳細な作戦書は、後ほど電送しますので」

フロースヒルデ「了解です。

あと零斗さん。一つお願いがあるのですが……」

零斗「それはひょっとして、海賊団に盗まれたという『飛空庭のデッキ』の件ですか?」

フロースヒルデ「えっ?どうしてその事が……?」

 私の考えをズバリ言い当てる零斗さん。突然の事で驚いた。

 トンカで飛空庭改造部品盗難事件の一件については、すでに新聞で全国に出回ってはいる。

 だが、海賊の館にデッキがある所までは世間には知れ渡ってはいないはずだ。

零斗「私も今でこそ堅気の商売をしていますが、元々は暗殺者。なので、裏社会の出来事には詳しいんですよ」

フロースヒルデ「なるほど……」

零斗「で、フロースさん。私にして欲しい事とは?」

フロースヒルデ「聞くところによると、海賊の島にはレベル64以上でないと入れないそうですが……。もしよろしければ、憑依抜けで中に……」

零斗「残念ですが、今のフロースさんのレベルは44。私は80台。憑依するにはお互いのLv差が30以内で無いといけません」

フロースヒルデ「そうですか……」

零斗「が、Lv64以上で無いと海賊島に入れないというのは、陸路での話です。

貴女の戦闘庭から直に降下すれば、無問題かと思います」

フロースヒルデ「成る程……空挺作戦(※)という手がありましたか……。これは盲点でしたね

じゃあ零斗さん。私達は艦に戻って出撃準備を整えてきます」
(※)実際には、飛空庭経由で空から海賊島に侵入する事はできません

零斗「はい。またのお越しを」

 零斗さんに見送られ、私と元帥は、バー「光」を後にした。

 いよいよ「フレイヤ」の初陣だ。後で後悔しないよう、準備には念には念を押しておく必要がありそうだ。



翌日早朝3時 ファーイースト共和国・ファーイーストシティ北部上空


戦闘庭「フレイヤ」 艦橋

フロースヒルデ「それでは、もう一度零斗さんからもらった作戦指令書の内容を再確認します」

乗組員一同、程度の差こそあれ緊張している。

無理も無い。タイニー島での威嚇射撃を除けば最初の実戦になりからだ。

フロースヒルデ「作戦の主目的は、異常増殖した『海賊の島』の海賊達を駆逐し、『海賊の館』に捕らえられているローザさんを救出する事。

ならびに、海賊達がトンカの飛空庭大工場より盗んだ『飛空庭のデッキ』の確保にあります。

作戦の流れとしては、まず最初に本艦からの艦砲射撃を行い、地上の敵を殲滅します。

但し、海賊の館本体への直接攻撃は厳禁とします。

そして、地上の敵が粗方片付いた後に、零斗さんを始めとしたタイニー通り商店街商工会の精鋭達が突入。

残敵、ならびに海賊の館内部を制圧するという手筈です。……ここまでで何か質問は?」



ミュー「地上部隊の構成員のLvは、どのくらいだ?」

フロースヒルデ「商工会のメンバーの内、L70台後半〜L80台の人たちを選んで突入部隊を編成したと、零斗さんが言っていたわ

あと、各店舗の常連さん達の中からも、L80台の人たちの協力が得られたそうよ」

ミュー「そうか……なら、地上戦闘の方は何も心配する必要はないな」

フロースヒルデ「他には何か……」

返答は無い。

フロースヒルデ「ジーク、敵地上部隊の配置は、どうなってるの?」


ジークウルネ「少々お待ち下さい……」

ジークウルネが、自分の机のコンソールを操作する。

そして次の瞬間、前方のモニターに海賊島の地図が表示された。



ジークウルネ「レーダーの情報から、敵海賊達はこの図の赤い円の中に集中的に配備されている模様です。

ちなみに、左の赤い矢印は、『海賊の館』のある位置です。

館周辺にも海賊達はちらほらとはいますが……数はそれほど多くありません」

ミュー「あの島の西端に、陸路での島の入り口があったはずだ。 敵の狙いとしては、出口から冒険者が出てきた瞬間を狙って

集中攻撃を仕掛ける腹積もりだろう」

山吹中佐「だが、こっちとしては好都合や。敵が固まっている方が、砲撃するほうとしては何かとやりやすい。

それに、敵には爆弾持った『パイレーツボマー』も大量にいるさかい、誘爆で一気に殲滅も狙える」



藍副長「ただ・・・・・・」

その時、いままで黙っていた藍副長が私に問いかけてきた

フロースヒルデ「何?副長」

藍副長「パイレーツボマーの爆弾の誘爆により島内に大火災が起こり、結果海賊の館まで延焼する危険性があります。

それについての対策は・・・・・・」

フロースヒルデ「ああ、それは大丈夫。砲撃した後、煙幕弾代わりに消火剤を大量に詰め込んだ砲弾を島に向けて放つ予定だから」

藍副長「成る程。消火剤も、うまく使えば煙幕弾の代わりにならくはないですからね」

藍副長は納得した。

ジークウルネ「姉さん・・・・・・そろそろ、海賊島が有効射程圏内に入ります」

フロースヒルデ「了解。総員、戦闘態勢に移行!!

 各乗組員は、慌しく持ち場に戻っていった。


 
午前3:15 ファーイースト共和国・海賊島南部上空



山吹中佐「艦長、全砲門・砲撃準備完了や。いつでもいけるで」

フロースヒルデ「よし・・・・・・」



フロースヒルデ「主砲、斉射三連!! ファイエル!!


SE:ズゴーン!!

 ギガントX7砲、ならびに艦橋丈夫の大型ガトリング砲が一斉に火を噴いた。


ドーン!!

 そして数刻の後、海賊島の東部を中心に大規模な爆発が何度も起きた・・・・・・



午前4:30 (焦土と化した)海賊の島



ジークウルネ「姉さん、零斗さんより入電。海賊の館の制圧に成功したとの事です」

フロースヒルデ「そう・・・・・・ローザさんとデッキは?」

ジークウルネ「はい。両方とも無事だそうです」

フロースヒルデ「それは良かった・・・・・・と、元帥。ちょっとここを任せたいのだけど・・・・・・」



元帥「下に降りるんでしょ?いいよ、ここは任せて」

フロースヒルデ「了解。じゃあ、行って来ます〜」

私は自分の艦から、海賊の館へと降下していった。


午前4:45 海賊の館内部

ローザ・アルバ「あ、フロースさん、おはよ〜」

海賊館2Fのベランダより中に侵入すると、つかまっていたはずのローザさんが、元気な姿で出迎えてくれた。

フロースヒルデ「ローザさん、無事だったんですね。よかった」

パイレーツの親分「な、なんだよぉおまえ・・・・・・人の家に勝手に上がりこんだ挙句、おいらの島まで焦土にするなんて・・・・・・

おまえ・・・人間じゃねぇ」

元気そうなローザさんとは対照的に、パイレーツの親分はどこかげんなりにしている。

親分に目立った外傷は無いようだが、零斗さんを始めとした突入部隊にさんざんいびられた事は、想像するまでも無い事だ。

フロースヒルデ「私は人じゃなくて天使なんだけど・・・・・・と、まあいいっか。

それよりも親分、トンカの大工場から飛空庭のデッキを盗んだの、貴方でしょ」

パイレーツの親分「ああ、そうだが」

 『汽笛』を盗んだパイレーツタイニーとは異なり、あっさり罪を認める親分。

パイレーツの親分「だが、俺の物は俺の物、人の物も俺の物。常識じゃねぇか

 と、同時に、開き直る親分。が、その時である。



海賊A「お、親分大変です! 倉庫にあったデッキが、粗方消えていますぜ!!」

パイレーツの親分「げっ・・・・・・いつの間に・・・・・・」

思わぬ事態に顔面蒼白となる親分。

ローザ「あ、デッキならさっき、零斗さん達にも手伝ってもらって、この館の倉庫にたくさんあったのを私の庭に積んでおいたよ。

後でフロースさんにも渡しておくね」

フロースヒルデ「あ、ありがとうローザさん」

 何と、すでにデッキは味方によって回収された後だった。

フロースヒルデ「ところでローザさん、零斗さんは今どこに?」

 館の中を見回すが、零斗さんの姿はどこにもない。

ローザ「零斗さんなら『光の塔に狩りにいってくる』とか言って、時空の鍵でモーグに戻っちゃいましたよ」

フロースヒルデ「なるほど・・・・・・。

さて、用事も済んだ事だし、帰りましょうか、ローザさん」

ローザ「はい」

 

パイレーツの親分「ちょっと待ておまえら!!

 帰ろうとする私達に、突如親分が一喝した。

パイレーツの親分「お前ら、人様が折角苦労して盗んだデッキを横取りした挙句、おいらの島を焦土にしやがって・・・・・・

生きてこの館から出られると思うなよ! 野朗ども!やっちまえ!!」


海賊「へい!」

 館にわずかに残っていた、フランカーパイレーツ達が私達に襲いかかろうとした。

 が、次の瞬間。

SE:ピィーーーゴーーー

海賊A「ぐあああっ!!あべ、あべっ!あべしっ!!(破裂)
海賊B「ししししま、しむ!しめさばぁ!!(破裂)

 私達に襲い掛かろうとした海賊達が、某漫画のように次々と破裂していった。

 もっとも、ここの海賊たちは人間ではなくぬいぐるみなので、破裂しても綿が周囲に舞う程度でそれほどグロテスクな状況にはなってはいないが。

パイレーツの親分「こ、こいつはまさか噂に聞く北斗神拳・・・・・・。まさかECOの世界にも伝承者がいたとは・・・・・・

そういえば、あの零斗とかいうドミニオンの女、ここを去る前においら達の体を指で突付いて回っていた・・・・・・」

 次々と破裂する部下達を目の前に、何かをブツブツつぶやく親分。

 そして次の瞬間。

SE:ピィーーーゴーーー



パイレーツの親分「うわっ、おいらのからだが!体が・・・・・・

た、たたたすけ・・・たす・・・・・・たわば!!

SE:ぱぁん(破裂)

 乾いた効果音と共に、親分の体は四散した。

 そして、誰もいなくなった海賊の館には、元は海賊『だった』大量の綿と、そして静寂だけが残った。

 暫くの沈黙の後、先に口を開いたのはローザさんだった。

ローザ「あ、フロースさん見て。この辺りに散らばってる綿・・・・・・みんな『フカフカの綿』だよ」

フロースヒルデ「ええっ?」

 『フカフカの綿』とはにタイニー島で産出される綿の事。本来はタイニーの中に入っている綿らしい。

 主な用途はアイテム精製で、融合の成功率を上げる「おしゃれな糸」を作る事。

 しかし、その産出量は極めて少なく、市場では高値で取引される。

フロースヒルデ「ほんとだ・・・確かに『フカフカの綿』だ・・・・・・

でも、キャパ100もあるから、一個以上は持ち歩けないよ・・・・・・」

ローザ「私がアイテム精製で『おしゃれな糸』にすればそんなにかさばらないから・・・・・・二人で山分けしよう。

このまま放置しておいてクラスタの塵にしちゃったら、勿体無いし」

 確かに、それは言えてる。

 私はローザさんの言葉に従い、床に落ちていたフカフカ綿(親分&パイレーツの残骸)を集め、全部おしゃれな糸にした上で

持って帰ることにした。


一方、その頃・・・

光の塔8F



男「まずいな・・・・・・パイレーツの親分が消されてしまった・・・・・・

タイニー通り商店街の手の者を拉致し、身代金を大量に取ってかの商店街を弱体化させ・・・・・・しかる後にあそこにある目障りな店どもを全て

立ち退かせて、跡地に私の大型ショッピングモールを作るという目的が・・・・・・これではオジャンではないか。

やはり、田舎のぬいぐるみ風情を当てにしたのが間違いだったか」

 光の塔8F。そこでなにやらぶつく怪しげな男がいた。

男「あの商店街の商工会には、腕利きのコマンドやバウンティハンターが複数いると聞く・・・・・・

連中が海賊島からとって帰す前に、『ターボエンジン』を持って国外・・・・・・

できればルーンミットガルツ王国(※2)あたりにでも亡命しなければ」

(※2)ラグナロクオンラインの舞台となる王国の事。

 男はなおもつぶやく。しかし・・・・・・


声「その亡命、まった」

 男に声をかける女の声。

男「ひっ!な、何ですか貴女は?」



零斗「名乗る程の者ではありません。ただ、タイニー通り商店街・商工会の者とだけ述べておきます」

男「あ、あのミミッチイあの古めかしいタイニー通り商店街の者が、私に何か用ですか?」

零斗「貴方はファーイーストのパイレーツ達を操り、我が商工会の者を拉致し、法外な身代金を我々に要求し、我々の弱体化を図った。

そして、彼らと共同でトンカの飛空庭大工場より『デッキ』ならびに『ターボエンジン』を盗み出し、まとめてルーンミットガルツ辺りに密売しようとした・・・・・・

海賊島のパイレーツ達が、泥を吐きましたよ」


男「な、何を証拠にそのような事を!! いいがかりは・・・・・・」

零斗「タイニー通り商店街・商工会組合規則第一条・・・・・・商工会に歯向かう者には死を

申し訳ありませんが、貴方には地獄へ行ってもらいますよ」

男「ひっ・・・・・・さ、裁判なら受ける・・・・・・自首もするから・・・・・・命だけは・・・・・・」



零斗「問答・・・・・・無用

男「ひぃ・・・お助け・・・ひっ・・・・・・ひっ・・・・・・ひでぶっ!!(ぱぁん)




数日後、バー「光」にて・・・・・・

零斗「フロースさん、感謝のしようもありません。おかげでローザさんも救出できましたし、犯人どもに引導を渡す事もできました。

これはほんのお礼です。受け取って下さい」



マスターは奥のタンスから、何と『ターボエンジン』を取り出してくれた。

フロースヒルデ「い、いいんですか?こんな貴重な物を・・・・・・」

零斗「ええ、かまいませんよ。もっともこれは、飛空庭大工場から盗まれた品の一つです。

大工場の方からも自由に使っていいという許可はもらっていますので、ご自由にお使い下さい」

フロースヒルデ「わかりました。それで、犯人はどうなったのですか?」

零斗「無事に捕まった、という話はききました。この部品は、実は警察の押収品を譲り受けた物なのですよ」

フロースヒルデ「なるほど・・・・・・」

零斗「それよりもフロースさん、飛行用の帆は出来たのですか?」

フロースヒルデ「材料は集まりましたから今、ローザさんに作ってもらっている所です。

出来次第、トンカに行って改装をお願いしてきます」

零斗「そうですか・・・・・・。さて、もう夜も遅いようですね。申し訳ありませんが、そろそろ店を閉めたいと思います」

フロースヒルデ「そうですか・・・・・・それでは、また〜」

 私はバー「光」を後にし、家路を急いだ。



戦闘庭「フレイヤ」 艦橋
ローザ「ついに出来ましたね〜」

ミュー「ああ、そうだな。あたしとローザさんの共同制作品である、特殊仕様の『飛行用の帆』『飛行用の大きな帆』。

フロースの驚く顔が早く・・・・・・」



フロースヒルデ「ただいま〜」

ミュー「あ、お帰りフロース」

ローザ「お邪魔しています。帆はもう作っておきましたよ、フロースさん」

フロースヒルデ「あ、ありがとうございます。ローザさん」

艦に戻ってみると、すでに帆は完成した後だった。

ローザ「ミューさんにも手伝ってもらって、特殊仕様の帆を作っておきました」

フロースヒルデ「特殊仕様の帆?どんなの?」

ミュー「改装が完了すれば嫌でも分かるさ。実はもうトンカへ出発する準備は出来ている。

いまからなら明日の朝にはトンカには着けるだろう。どうする?出発するか?」

フロースヒルデ「ええ、そうしましょう」

ローザ「フロースさん、私も便乗させてもらっていいかな?私もトンカに用事があるんで」

フロースヒルデ「いいですよ、ローザさん。地下の艦長予備室を使って頂戴。

ミュー、悪いけどローザさんの案内を」

ミュー「了解。じゃあローザさん、こっちだ」

 数分後、『フレイヤ』はトンカへ向け、アクロポリスを後にした。


そして・・・・・・

ついに飛空庭改装用の部材が揃い、「フレイヤ」の改装がスタートしました

そして、待つことしばし・・・・・・

マイスターセレナ「改装、完了しました。このだびはご利用ありがとうございます」

マイスターから改装完了の報告が来た。

意気揚々と、改装が済んだフレイヤへと乗り込むと・・・・・・



何と、自分でもびっくりするくらい、立派な艦に仕上がっていた。

回転帆の類が一切無くなり、代わりにロケットに置き換わっている。

ミュー「よ、フロース。どうだい?あたしとローザさんが共同で作った『特殊仕様の飛行帆(※3)』の出来栄えは」

(※3)この艦に積まれている飛行帆は「ロケット飛行帆」と呼ばれるもので、実際は材料さえ集めれば特別な事をしなくても設置できます。

ミューが艦内通信で、私に問いかけてきた。

元帥「ミューちゃん、これってもうすでに『帆』じゃないような気がするんだけど」

元帥がすかさず突っ込みを入れる。

ミュー「まあ、細かい事はいいじゃないか、元帥。今までの回転帆だと攻撃を受けたら、あっさり折れちまいそうで不安だったからな。

今回は大工場の連中と共同で回転帆の使用をやめて、ロケット方式に切り替えた。

肝心な部分は厚い装甲版で覆っているから、少々の攻撃ならびくともしないぜ」

 どうやらミュー、飛空庭大工場の連中に混じって、改装を手伝っていたらしい。

フロースヒルデ「なるほど。で、速力の方はどのくらい上がった?」

ミュー「実際にテストしてみないと分からんが・・・・・・恐らく、前の2倍・・・下手したら2.5倍は出るかもしれんな。

早速、航行試験やってみるかい?」

フロースヒルデ「そうね。そうしましょう。じゃあみんな、航行試験の準備を」

全員「了解」




 ・・・・・・こうして、『フレイヤ』改装は紆余曲折を得て、ここに終了した。

 いろいろとハプニングもあったが、最後は無事に改装が終わり、ほっとしている。

 ともあれ、これから暫くはまた平穏な日々が戻りそうだ。

 その間に、Jobレベル50になって、ブレイドマスターに転職したい所である・・・・・・

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