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               日記第十九回
本日の日記担当:Dr・藪


某月某日 ファーイースト共和国 ファーマーギルド総本山



ファーマーギルドアクロポリス代表(以下ファーマーギルド代表)「そろそろ刻限のようだベ。 それでは、07年下半期のファーマーギルド総会を開催するっぺ」

 のんびりした口調で、司会を務めるファーマーギルド代表が総会の開催を宣言した。

ファーマーギルド代表「では、まず最初に、ファーマーギルド軍令部総長より挨拶があるっぺ。総長、どうぞ」


ファーマーギルド長「ああ。 やあ諸君。暑い中集まってくれてご苦労だった」

 続いて、ファーマーギルドの総長が挨拶をする。

 ちなみにこの男、理由は後で述べるがファーマーギルドの総長とは言っても、『名目上の』総長に過ぎない。

ファーマーギルド長「このファーマーギルドも、おかげさまで今年で創設300年を迎えた。 この節目の年を迎えるに辺り……」


Dr・藪(だるい事このうえない、ファーマー総会の始まりか……)

 ファーマーギルド長の面白くともなんともないスピーチをよそに、私はこっそり持ち込んだ医学雑誌を(ファーマーギルド長らにばれないように)

取り出した。

 つまらないスピーチを延々を聞かされるよりは、医学雑誌に目を通して少しでも知識を増やしておいたほうが、余ほど有意義である事は

言うを待たない。

 早速、私は愛読の医学雑誌『シモン=ピエール=ド=ラプラス』を広げ、その第一ページに目を通した。


---------ここから、医学雑誌『シモン=ピエール=ド=ラプラス』 8月特大号の内容---------

第1章:フェンサーギルドにおける『ひふへウィルス』の爆発的流行について

 最近、フェンサーギルドにおいていわゆる『ひふへ』が爆発的に増えている。

 『ひふへ』……『被虐・不遇・ヘタレ』の三大要素を持った人間は、遺伝性によるものと、ウィルス性のよる物の二種類が存在する事が

最近の研究で明らかになってきた。

 そして、独自にフェンサーギルド所属の『ひふへ』達を調査した結果、一人の例外もなく『ウィルス性ひふへ』である事があわかった。

 そして、当のフェンサーギルドマスター自身も『ひふへウィルス感染者』であり、転職時に紋章を宿す際、新人フェンサーやナイトに

ウィルスが伝染ってしまう事が判明した。

 ウィルスの伝染確率は男性が100%、女性が75%程であり、フェンサー系の女性キャラにはひふへに該当しない人物も極少数いるものの、

男性キャラについては、少なくともネタブログ界で『ひふへ』で無い人物など皆無といっても良い。

 なお、この間エミル君が不死の肉体ほしさに『ひふへウィルス』を注射したという報道を耳にしたが、正直言って小生はこのような暴挙には

賛成しかねる。

 理由は簡単である。 医学関係者には言うまでも無いことだが……

 『ひふへ』は不治の病であるからである。

---------ここまで、医学雑誌『シモン=ピエール=ド=ラプラス』 8月特大号より抜粋---------


男「藪先生や、何難しそうな読んでるんだ?」

 唐突に、隣に座っていた男性ファーマーが声をかけてきた。

 彼の名はジューダス氏のブログ所属のロニと言う。

 そして、女性の比率の極めて高いファーマーギルドにおいて、数少ない男性ファーマーでもあった。

 性格は私の見た限り平凡。 極普通の農家の子息に見える。

藪「見ての通り、医学雑誌だが…… 君こそ、こっそり何読んでいるのかね?」

ロニ「うるさい。 人が何読もうと勝手だろう」

 彼の机の上には、お約束にも漫画本……それも青年男性向けの物が広げられていた。


藪「別に、君の行為を咎めるつもりは無いよ。 むしろ、この退屈極まりない総会の時間を読書で過ごしているという点において……

ロニ君と私は、同志ともいえなくもない」

ロニ「まあ、言われてみれば確かにな……」

藪「しかし……今はお飾りのファーマーギルド長の話だからまだいいが……

次の話は、このファーマーギルドの『真の長』の話になる。

彼女の話の間くらいは、読書は控えていたほうがいいかもしれないね」

ロニ「『真の長』…… ああ、一族のあの人の事か。 了解だ。

あの人に目を付けられたら、命がいくらあっても足りないからな」

 私の提案に、ロニ君が賛同したちょうどその時。


ファーマーギルド代表「総長、ありがとうございますっぺ。 では、次にプレイヤーを代表して、ECO家の一族の母者さんのお話だべ。

では母者さん、どうぞだべ」

 『プレイヤーを代表』……とは言うが、この母者氏こそ、ファーマーギルドの『真の長』である。

 その戦闘能力はいわゆるECOの『ネタブログ界』の最強を誇っており、ファーマーギルドはおろかライオウやパーティザンといった

ボスモンスターが束になっても、全く歯が立たないそうだ。

 そして、母者氏に影響されたのかどうかはわからないが、母者氏の他にも『GRECO』の庭番嬢、『Little Wish』のイェルド嬢等、

ファーマーギルドには戦闘能力の高い、一騎当千の強者達が集まってきている。


母者「……みんなこのくそ暑いなか、総会に参加してくれてご苦労ね」

 その母者氏が狭い演壇に立ち、スピーチを開始した。

 そのスピーチの内容が面白いか面白くないかについては、私の口からは述べるのを避ける。


ロニ「……なあ、藪先生や」

 母者さんに聞かれないように、小声でロニ君が私に問いかけてきた。

藪「話なら後にしてくれたまえ。 母者氏に睨まれるぞ」

ロニ「……いつも集会サボっているあんたが、何で今日に限って出てきてるんだ?」

 私の警告を無視して、ロニ君は私語を続ける。

藪「……それに関する答えは簡単だ。 私はアルケミストになった後、ファーマーギルドの集まりを5〜6回近く無断欠席していた。

そしたらある日、私の庭に母者氏が直々に乗り込んできて……」


母者「集会無断欠席するんやなか!!


藪「……と、盛大に怒鳴られてしまった訳だ」

 もっとも、私がわざわざ退屈この上ない総会に顔を出した理由はそれ以外にもあるのであるが、ロニ君には黙っていた。

 今はまだ、それについて語る時ではない。

ロニ「なるほどね…… 母者さんに怒鳴られちゃ、俺だって出席するな」

藪「私としてはアルケミストになってしまった以上、もう農家同士の集まりに参加する必要も無いと思っていたのだが……

ちなみに、『GRECO』の庭番女史も、マリオネストになったからファーマー同士の集まりに参加しなくてもいいと思っていたらしく……

無断欠席を続けた挙句、私と同様に母者さんに怒鳴られたらしいね」

ロニ「そうか…… こわいねぇ……」

 と、ロニ君が言いかけたその瞬間である。


母者「そこっ! 何くっちゃべってるね!!

 私語をしている我々に向け、母者氏が一喝してきた。

ロニ「ひっ!! も、申し訳ありません!!」

 ロニ君は母者氏に睨まれると、一もニも無く土下座して許しを請うた。

 一方の私の方はというと……


藪「……これは、失敬」

 口でこそ謝りはしたが、母者氏からメンチ(目線)をそむけることはしなかった。

 母者氏の方も負けじとメンチを切り、メンチ合戦が始まった。

 ……が、すぐに母者氏は私から目をそむけ

母者「……分かればいいたい」

 と言い残し、スピーチを再開した。


ロニ「ふぅ……心臓が止まるかとおもったぜ。

しかし藪さんよ、母者さんに睨まれてよく平然としていられるな」

藪「何、自分の心臓とポーカーフェイス、それにメンチ合戦に関しては自信がある。

メンチ合戦なんて物は、相手の気迫に呑まれなければ大抵勝てる物だ」

ロニ「なるほどね……」

母者「……以上。これで母さんの話は終わるたい」

 ちょうどその時、母者さんのスピーチが終わったようだ


ファーマーギルド代表「母者さん、ありがとうだべ〜。 じゃあ、次から提出された議題の審議に入るべ〜

なお、新たな議題の提出は、第8議案採決までにお願いするべ」

 ファーマー総会は序盤戦を終え、いよいよ本戦である各種議題の審議に入った。

 無論、この各種議題の中には予算案の審議等、重要な項目もあるが……

 そんな物に興味の無い私とロニ君が、この後暫くの間読書タイムに入った事は、言うを待たない。


……2時間後



ファーマーギルド代表「さて、次はいよいよ最後の議案、第8議案の審議に入るべ。

では、議案提出者のティエーラちゃん、どうぞだべ〜」


ティエーラ「はいはい〜」

 司会に呼ばれ、からくりぱんだ工房のティエーラ女史が壇上に立った。

ティエーラ「今回提出した議題は…… ずばり『懲罰動議』です」

 温厚な彼女の口から『懲罰動議』などと言う物騒な言葉が飛び出したので、周囲は一時騒然となった。

 ちなみにファーマーギルドで言う所の『懲罰動議』とは、不始末をやらかしたギルドメンバー、ならびに首脳陣に

何らかの罰を下す時に出される議案の事である。

ファーマーギルド代表「懲罰動議…… 一体誰に対する動議だべ?」

ティエーラ「ええと…… ジューダスさん所のロニ君に対する懲罰動議です」


ロニ「!!

 唐突に自分に対する懲罰動議が提案されたので、ロニは驚愕のあまり手にしていた漫画本を床に落としてしまった。

ロニ「ちょ、ちょっとまてティエーラ! 一体、俺が何をした!?」

ティエーラ「とぼけたってダメです!ロニ君!!

うちのフェーゴ君から聞きましたよ。 ロニ君、あなた……」



ティエーラ「アマネちゃんのスカートの中に頭から突っ込んだでしょう!!

 総会の会場どころか、ファーイーストシティ中に響き渡るような大声で、ティエーラは怒鳴った。

 ちなみに、彼女の言う「アマネちゃん」とは、彼女の姉であるドルイド、アマネセール嬢の事である。

 実の姉が破廉恥な目にあったとあって、ティエーラはいつにもなく激怒していた。


ロニ「ちょ、ちょっと待てティエーラ!! 何を証拠にそんな事を……!!

大体、情報の出所がソードマンギルド最凶のひふへ・フェーゴだって所からして、怪しいじゃないか!!」

 ロニはロニで、必死に疑惑を否定しようとしていた。

ティエーラ「生憎、アマネちゃん本人にもちゃんと裏を取りました。 で、アマネちゃん今、ロニ君のせいでショックで寝込んじゃってるんです。

この責任、どうとってくれるんですか!!」

 ティエーラはティエーラで、全く引くそぶりを見せない。

 いつ、武力衝突が起こってもおかしくない状況になってきた。



庭番「あ、話の途中で悪いけど、私からも懲罰動議を提出したいんだけど……いいかしら?」

 話の腰を折って、『GRECO』の庭番嬢が発言した。

ファーマーギルド代表「いいけど……誰にだべ?」

庭番「アルケミストマスターよ。 私、庭番は……」


庭番「アルケミストマスターの更迭を要求するわ!!

罪状はズバリ、転職時のセクハラ行為よ!!(GRECO 日記22回参照)」

 庭番嬢は庭番嬢で、アルケミストマスターに対する更迭動議を起こした。


アルケミストマスター「ちょ、ちょっとまってくれたまえ!庭番君。 あの時僕は君に鉛弾2〜3発打ち込まれて、生死の境を彷徨ったんだぞ!!

それだけではまだ不足だというのかね!?」

庭番「不足よ!アルケミストマスター!! 辱めを受けようとした乙女の怒りが、鉛弾の2発や3発で収まると思ってるの!?」

 庭番嬢とアルケミストマスターの方も、早くも対決モードに突入した。



ファーマーギルド員「私からも一つ、懲罰動議を出したいのですが……」

 おずおずと……しかし勇気を振り絞って、ファーマーギルド員の女性が懲罰動議を提案した。

ファーマーギルド代表「? 今度は誰にだべ?」

ファーマーギルド員「……司会のファーマーギルドアクロポリス代表、貴方です


ファーマーギルド代表「!! くぁwせdrftgyふじこl!?

 あろうことか、司会のファーマーギルド代表も、懲罰動議の槍玉に挙げられた。

ファーマーギルド員「貴方、前々からずっと、ファーイーストシティを行き来する女の子のスカートの中覗いているの、私ずっと見てきてたんですからね!!

かくゆう私も、何度も貴方にスカートの中を覗かれましたし……

せっかくの機会ですから、ここで貴方のハレンチ行為を告発します!!」

ファーマーギルド代表「ちょ、ちょっとまつべ。 この街はカメラワークの都合上、丈の長いスカートをはいていても

スカートの中が見えてしまう事があるんだべ(注:これは本当の事なので気をつけましょう。特に騎乗ペット乗っているときは要注意)。

文句なら、オラでは無く、マップを作ったヘッドロックの連中にいってけろ」

 ファーマーギルド代表も見苦しい言い訳をする。



ファーマーギルド代表「見苦しい言い訳は止めてください! さあ、潔く辞任して下さい」

 がしかし、告発したファーマーギルド員の怒りは収まりそうもない。

 それどころか、女性陣の比率が多い総会の参加者の中にも、3人のセクハラ野朗に対する怒りの感情が高まってきているように感じられた。

 そして、次の瞬間……

会場内の女性陣一同(一部除く)「変態!!痴漢!!セクハラ野朗!!

 堰を切ったように、会場の女性陣達から三人の被疑者に対し、非難の大合唱が浴びせられた。

 大勢の女性に非難の声を浴びせられ、三人は反論する意欲を瞬時に失ってしまった。



藪「やれやれ…… 少しは静かにできないものか……」

 私は無論、傍目には暴徒にしか見えない女性陣の非難コーラス隊には参加はしなかった。

 非難コーラス隊に参加してない女性は、他には『LittleWish』のイェルドさんや一族の母者氏のような重鎮の人たち、

それに、さがしものにでているこまち嬢や、家具の専門店ローザのローザ・アルバ嬢といった、比較的大人しい人たちくらいな物である。

 しかも、そのローザ・アルバ嬢でさえ、近くに座っていたロニ君に対し……


ローザ・アルバ「えっちなのはいけないと思います

 と、非難の声をこっそり上げていた。


ロニ「な、なぁ……藪さんよ。 最早、あんただけが頼りだ……

頼む、助けてくれ……」

 女性陣の非難を浴びまくったロニ君は精根尽き果てた表情で、私に助けを求めてきた。


藪「クックック…… 私は君の事を正直甘く見すぎていたようだね。

スカートめくりならまだ弁解の余地があったかも知れ無いが…… よもやアマネ女史に対してスカート突撃とはね。

並の変態ならびびって、そこまではできまいよ」

 私も一応女性の端くれ。 なので、この場にいる女性達がロニ君達を非難する気持ちも理解できた。

 ゆえにこの場は遠慮なく、『皮肉』と言う手段でロニ君にアタックをかけることにした。

ロニ「うう……」

藪「それともあれか、ロニ君。君は……」


藪「将来産婦人科医にでもなるつもりなのかね?

産婦人科の医療行為の中には、俗に言う『エロ行為』に近いのも結構あるからね。

察するところ、それが目当てで産婦人科医を目指しているのかね?」

ロニ「そ、そんなつもりはねえよ、藪さんよ…… 皮肉言うのもたいがいにしてくれ」

 ロニ君は泣きそうな表情で、私になおも助けを求めてきた。 と、その時である。


母者「みんな、言いたい事は母さんも痛いほどよくわかるけんね。 けど、この場は静かにしんしゃい」

 いままで沈黙を守っていた母者氏が、暴徒合唱隊に対し静かにするように言った。

 その手には、母者氏愛用の『死神の鎌』が握られている。

 ファーマーギルド……いや、ネタブログ界1の重鎮の言葉に逆らえる者などいるはずもなく、瞬時に会場は静かになった。

母者「……皆の怒りは、母さんがしっかり預かったたい。 という訳で……」

 ここで、母者氏は被疑者三人の方をギロリと睨む。


母者「今告発された三人は、母さんの前に並ばんね。

見せしめとして一人ずつ、三枚に下ろしてやるばい」

 母者さんのいきなりの死刑宣告に、三人は凍りついた。 私の見る限り、いつ心臓麻痺が起こってもおかしくない状態である。

ロニ「や、藪さんよ…… 冗談抜きで……助けてくれ。

俺はこの間のひふへ検診で、『ひふへじゃない』って診断受けてるから…… 三枚に下ろされたら、一巻の終わりだ……」

 ロニ君はなおも生への望みを捨てようとせず、死人のような表情で改めて助けを求めてきた。

 流石に、これ以上からかうのは可愛そうに思えてきた。

藪「まあ、今回は私が被害に遭った訳でも無し…… 母者氏を含めた皆の前で土下座して謝れば、助けてあげない事も無い。

ただ……助けてあげるにして、これだけは言わせて貰うよ」

ロニ「……何だ、藪さんよ……」

藪「今から、私はある『処置』をするが……」


藪「私はセクハラ容疑の君達を助けるつもりで、その『処置』をする訳では無い……という事だけは始めに述べておこう。

無用な流血沙汰を見るのは、個人的に好きでは無いし…… なにより、しなくてもいい医療行為や死体処理をさせられるのはもっと好かないからね」

ロニ「わかった…… わかったから早く助けて……」

藪「土下座が先だよ、ロニ君。 私が誠意有りと判断した時点で、『処置』を行おう。

万が一、土下座ついでにスカートの中を覗き見るような真似をしたら…… この話、無かった事にさせてもらうよ」

ロニ「わ、わかった……

み、みんな悪かった!! アマネのスカートに突っ込んだ事は謝る!! だから許してくれっ!!」

 それこそ必死こいて、ロニ君は土下座の全方位射撃を開始した。

 それにつられて、アルケミストマスターやファーマーギルド代表も土下座を開始する。

 その姿からは、有る程度の誠意と反省の意は感じ取れた。


藪「頃合か……」

 私は、腕時計に仕込んだスイッチを押した。

 すると程なくして、通気口からガスが流れ出した。

 もっとも、このガスは無味無臭なため、私以外は誰もガスの流出に気がついていない。



母者「む……どうしたんやろ…… 母さん、急に怒る気がうせてきたばい……」


庭番「私も…… いったいどうしたんだろ……」

 他の参加者達も、急にセクハラ容疑者達を怒る気力を無くしていった。

 『処置』は、とりあえず成功したようだ。

母者「……まあ、三人ともこうして反省している事やし、今回はこれで許してやろうと母さん思うけんね。

皆も、それでいいかえ?」

 他の参加者からは、特に反論などは出されなかった。

母者「じゃあ三人とも、今日は特別にお咎め無しにするけん。 せやけど、次やったらこんなもんじゃすまないから、覚悟しんしゃい」

三人「は、はい……」

 セクハラ容疑者の三人の表情に、生色が戻ってきた。


ロニ「ふぅ……助かった……」

 ほっとした表情で、ロニは席に戻った。

ロニ「なあ、藪さんよ。 あんた、一体何したんだ?

あの母者さんや庭番がああもあっさり怒りを静めるなんて、普通じゃ無いと思うが……」

 小声で、ロニ君は私に問いかけた。

藪「某国で使われている、暴徒鎮圧用のガスを通気口から流しこんだ。

このガスは対象の脳に作用し、怒りを司る『交感神経』を一時的に麻痺させ…… 相手を一定時間、強制的に怒れなくする作用がある。

ちなみにこのガスにはそれ以上の副作用は無いから、安心してくれたまえ」

 私も周りに聞こえないような小声で、ロニ君の質問に答えた。

 ちなみに、ここで言う『某国』とは、ミュー君の故郷であるマーズ連邦の事である。

ロニ「なるほど…… で、あんた。 何でそんな物を通気口にセットしておいたんだ?」

藪「何。議論が紛糾して中々総会が進まなかったり、母者氏がハハジャソードを暴発させようとした時用の対策さ。

特に母者氏は過去の総会で何度かハハジャソードをぶっ放しているらしくてね。 ファーマーギルド長から対策を密かに依頼されていたのだよ」

ロニ「で、そのハハジャソード対策の一環として、そのガスを事前に仕掛けておいたというわけか」

藪「ああ、その通りだ」

ロニ「ま、何にせよ、助けてくれてありがとよ、藪さん。 礼を言うぜ」

藪「それはどうも……」


藪「だが…… このガスにも問題が無い訳では無い。

というのもこのガスの効果時間は常人で1分ちょっと。 母者氏クラスの強者だともっと短くガスが抜け切るだろう。

ガスが切れた後に、また妙な懲罰動議を提出されると面倒だし…… 母者氏あたりがガスの噴出に気がついたりしても、何かと面倒な事になる」

 最悪の場合、私が母者氏に疑われて処刑される危険性さえあった。

ロニ「確かにな…… できれば厄介ごとに巻き込まれる前に、さっさと帰りたいものだぜ」

ロニ君もうんざりした表情で呟いた。

藪「厄介な事になる前に、ちょっと『タゲ逸らし』をしておこう。 ちょうど、私にも提出しておきたい議題があってね。

……司会殿」

 そこで、私は挙手をした。



イェルド「はい、何でしょう藪先生」

 私の発言に答えたのは、今まで司会をしていた東北弁のファーマーギルド代表では無く、ファーマーギルドの実質的No2、

Little Wish』のイェルド女史であった。



ファーマーギルド代表「い、イェルドさん。 司会進行はオラの役目だべ。 席に座っていてけろ」

イェルド「……黙りなさい、女性の敵」

ファーマーギルド代表「ひっ……」


イェルド「ハレンチ男である貴方に、総会の進行を勤める資格はありません

 イェルド女史は冷たい視線を、ファーマーギルド代表に向けた。 その瞳には、静かな怒りが秘められている。

 怒りを一時的に鎮めるという例のガスは、冷静沈着な彼女には通用していないようだ。

ファーマーギルド代表「も、申し訳ないっぺ……イェルドさん」

 そして、睨まれた側のファーマーギルド代表は、一もニも無く土下座した。

イェルド「みなさん、以後の司会は私、イェルドが行いたいと思いますが…… 良いと思う方は挙手をお願します」

 イェルド女史の提案に、会場のほぼ全員が挙手をした。


イェルド「ありがとうございます、皆さん。 では藪先生、議案の説明をどうぞ」

 元の穏やかな表情に戻り、イェルド女史は発言を促した。

藪「了解だ、イェルドさん」


藪「では、私の議案を述べさせていただこう。  始めに申し上げておくが、この議案は平和的な物では無い。

どちらかというと、ドンパチ系の議題だ」

イェルド「ドンパチ系といいますと……藪先生も懲罰動議を?」

藪「いや、そんな生易しい物じゃない。 私の提案したい事は……」


藪「ずばり『追討令』だ

参加者一同「!!」

 私の提案に、会場の空気が一瞬、変わるのが感じ取れた。


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