日記22話(2)


光の塔



ノレンガルド「光の塔に着いたはいいけど…… これからどうするの?鴎外。

アクティブモンスターは確か塔の入り口からウロウロしているって話を、前にフロースお姉ちゃんから聞いた事があるけど……」


鴎外「我輩の胸アクセサリに憑依するのである。 光の塔のモンスター達と我輩は顔見知りも同然……

         アクティブモンスター
故にこの塔の好戦的な連中にしても、我輩を攻撃してくる事はまず無いのである」

ノレンガルド「なるほど…… 考えてみれば、同じダンジョンに住んでいるモンスター同士だもんね」

鴎外「ただ、言語能力の無いモンスター(エンジェルボア、フォックストロット&ハウンド等)の中に、時々頭のイカレた輩がいるのである。

その手の輩に攻撃される可能性が0とはいえない故、警戒を怠らないで欲しいのである」

ノレンガルド「そっか…… じゃあ、憑依したら早速、屋上に行こうか」

鴎外「了解なのである」

 僕は鴎外の胸アクセサリに憑依すると、塔の中へと入っていった。



光の塔内部

ノレンガルド「今の所順調だね、鴎外。 アクティブモンスターらしい人達も、攻撃するどころか会釈して通してくれるし……」

鴎外「そうなのであるな…… では、この調子で一気に上へ……」

 と、鴎外が言ったその時。


少女「あ、アンブレラ発見〜 ちょっと狩っていこう」

 突然、近くを通りかかった冒険者の女の子が鴎外に絡んできた。

鴎外「げ…… あれは見た目は普通の女の子、その実は一流(ベースLvカンスト)暗殺者であるほたて嬢……

奴はヤヴァイのである。 うちの藪先生や一族のル・ティシェ殿でさえ、彼女には一目置いていると言われているのである……」

ノレンガルド「そうなんだ…… で、どうするの?鴎外?」

鴎外「戦って勝てるような相手では無いのである。 ここは逃げるのである」


SE:ピキーン!!

 丁度その時、近くにいたフォックスハウンドの赤いの(R1)が4体ほど、ほたてさんに絡んできた。

ほたて「ちょっと〜やめて撃たないで〜!! ハウンドさん自重して〜!!」

 ほたてさんはこんな事を口では言っていたけど、短剣で手際よくハウンドR1さんを退治し始めた。

鴎外「……さらば、ハウンドR1達。 君達の犠牲は、忘れないのである」

 ハウンドR1さんたちがほたてさんを引きつけている間に、僕と鴎外は上の階へと逃げ出した。


光の塔A12F


ノレン「ふぅ…… 何とか逃げ切ったようだね、鴎外」

鴎外「そうなのである。 それにしても……迂闊だったのである」

ノレン「迂闊って・・・?」


鴎外「我輩に憑依すれば、確かにこの塔のアクティブモンスターの大半にはタゲられずに済むが……

代わりに、この塔にやってくる冒険者…… 特に廃人冒険者にタゲられる危険性が高まる事を、すっかり失念していたのである」

 申し訳なさそうに、鴎外は言った。

ノレンガルド「鴎外が謝る事は無いよ。 でも……最近光の塔の上層部で狩りする冒険者って、めっきり減ったって聞いた事があるよ。

出くわしたとしてもさっきみたいに逃げまくれば、何とかなるんじゃなないかな?」

鴎外「……そうするしか無さそうなのである。 もし絡まれた時はホーリーライトでの援護、お願いするのである」

ノレンガルド「了解だよ、鴎外」

 僕は再び鴎外の胸アクセサリに憑依すると、光の塔を上へと上っていった。



光の塔A22F

鴎外「あと少しなのである。ここのすぐ上の階が、屋上なのである」

ノレン「意外とあっさり行けたね。 後ニ・三回、絡まれると思ったんだけど……」

 ほたてさんに遭遇して以来冒険者の姿を見ることは無く、割とすんなり僕たちはここまで来る事が出来た。

声「あ、そこにいらっはるのは、もしや兄様では……!」

 突然、女の人の声がしたと思うと……


そこには白いアンブレラみたいなモンスターがいた。

鴎外「おお……そこにいるのは我が妹。 よくぞ無事で……」

 どうやら、この子は鴎外の言っていた妹のようだ。

白アンブレラ「兄様もご無事でなりよりどすえ……

おや、兄様の胸アクセサリに憑依している御仁は、どなたどすえ?」


ノレン「始めまして、妹さん。 僕はノレンガルド。 この子……鴎外の友達だよ」

白アンブレラ「うちはリリカルと申しますえ。 もっとも正式な名前はまだ、ないんやけど……

正式な名前が決まるまでは、単にリリカルとよんでおくれやす」

ノレン「うん、よろしくね。 リリカルさん」

リリカル「それにしても……兄様が胸アクセサリーに憑依を許可している所をみるに…… ノレンはん、若いのに相当な人物と、お見受けしましたえ」

ノレン「え……? アンブレラの胸アクセサリに憑依出来る事って、そんなに凄いことなの?」


鴎外「説明するのが遅れてしまって申し訳ないのであるが……

我らアンブレラ系Mobにとって、人間を胸アクセサリーに憑依させる事は…… 即ち、その人間を真の友として認めるという意味もあるのである」

 思いがけない事を、鴎外は言った。

リリカル「もっとも……そんな徳の高い人間はんはここ数十年一人も出てはいなかったのに……

多くの人間にとって、うちらは狩りの対象でしかあらへんからなぁ……」

 嘆くように、リリカルさんは言った。

リリカル「……ノレンはん。兄様が真の友と認めた以上、うちもノレンはんの事、真の友達と認めるえ。

ノレンはんも、それでよろしいやろうか?」


ノレン「もちろんOKだよ。 今後ともよろしくね、リリカルさん」

リリカル「こちらこそ…… っと、そうやった。

兄様、ノレンはん。 唐突で申し訳ないんやが、助けておくれやす」

ノレンガルド「? どうしたの?リリカルさん」


リリカル「今塔の屋上で、殆ど山賊同然の廃人冒険者が暴れていますえ。

うちらMOB達はともかく…… 塔で狩りをしている他の冒険者も『狩って』おりますえ。

うちも身の危険を感じて、ここまで避難してきましたえ」

ノレン「え……そうなの? それは大変だ……」

鴎外「しかしノレン少年、我輩らが行った所で廃人冒険者相手に何が出来るのであるか……」

 不安そうに、鴎外は僕に呟いた。


ノレン「困っている人達を目の前にして、Uターンするのは良くない……って、フロースお姉ちゃんがいつも言っていたよ、鴎外」

鴎外「それは我輩も分かっているのであるが、しかし……」

ノレン「心配しなくてもいいよ、鴎外。 廃人さんだって同じ人間なんだから……話せばきっと分かってくれるよ」

鴎外「話せばって…… ノレン少年、世の中話し合いが通じる人間が全てとは、限らないのである。

特に廃人と呼ばれる連中の中には、話し合いが通じる人間の方が少ないのである」

ノレン「そんな事、やってみなければわからないよ、鴎外。 それに、万が一廃人さんたちに絡まれたとしても……」


ノレン「切り札は、ちゃんと用意してあるからね


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