日記第30話(6)


フロースヒルデ「うぁあ……」

 その時、艦長は『ある光景』を見て声にならない悲鳴を上げました。


謎の少年「うぁらば!!

 謎の少年の頭部が、艦長の目の前でまるで風船のように吹き飛んだのです。

 いくら機械人形とはいえ、人間の頭部が吹き飛ぶシーンは見ていて気持ちのいいものではありません。

 そして、少年が倒れると同時に……


アンブレラ系Mob達「オオオオオッーーーー!!!

 300匹近くいるアンブレラ達が、一斉にDEM達に襲い掛かったのです。

 たちまち修羅場と化す大広間。



元帥「フロースちゃん、西院ちゃん。 今がチャンスだよ。 このドサクサに紛れて、一気にゲートの所まで行こうよ」

フロースヒルデ「了解。 ……って、そのゲートの場所は……」

 すでに周囲はもみ合う傘とDEM達でごった返しています。

 普通の人では、とても広場の奥の方まで見通すことは出来ません。

 しかし……


西院「……私に付いてきて下さい。 ゲートの場所まで、ご案内します」

 ただ一人、このドサクサの中で広場の奥を『視る』事が出来る人がいました。

 『心眼』を持つ女の子、西院さんです。

西院「……フロース様、済みませんが護衛の方、よろしくお願いします」

フロースヒルデ「了解。 くれぐれもはぐれたりしないようにね、西院さん」


数分後……



西院「! アイスアロー!!」

 西院さんが、突如何もない空間にアイスアローにかけました。

 その何もない空間にいたのは……


ホワイト「あいたたた…… クローキングはしっかりしていたのに……」

 何を隠そう、私ことホワイトです。

西院「……」

 西院さんはさらに第二撃を私にかけようとしますが……


フロースヒルデ「ちょっ……西院さん!その子は私の仲間! 撃たないで〜!」

 慌てて、近くにいた艦長が西院さんを制止しました。


西院「はっ!! も、申し訳ありません! お、お怪我はありませんか……」

 おもいっきり私を誤射してしまった事に、慌てふためく西院さん。

ホワイト「大丈夫ですよ、たいした事無いですから。 このどさくさの中じゃ、誤射の一つや二つしょうがないですよ」

 本当は結構痛かったのですが、今は誤射の一つや二つで一々文句言っている時ではありません。


ホワイト「それにしても艦長、無事だったんですね。 良かった〜」

 艦長の無事を確認を確認し、ひとまず安心しました。

フロースヒルデ「ごめんなさい、ホワイトさん。私のせいで迷惑をかけて……

と、そうだ。 合流したばかりで悪いのだけど……」

ホワイト「? どうしたのですか?」

フロースヒルデ「今私はこの子……西院さんを、この広間に奥にある『異世界へのゲート』まで護衛しているのよ。

何でも、遺跡にDEMが沸き始めたのはそのゲートのせいだから、封印しないといけないとか……」

ホワイト「ほむ……要するに、護衛任務を手伝って欲しいって言うんですね。 了解しました」

フロースヒルデ「その通り。 じゃあ、ホワイトさんは西院さんの右を固めて頂戴。 私が左を担当するわ」

ホワイト「了解」





大広間・奥

西院「……これです。 これが『異世界へのゲート』と呼ばれるものです」

 西院さんに案内された私達は、やがて広間の最深部へとたどりつきました。

フロースヒルデ「成る程…… ぱっと見は普通のワープポイントと変わりは無いわね……」


ホワイト「でも、間違ってこの中に入ったりしたらDEMさん達にフルボッコにされちゃうんですよね……」

西院「はい。 このゲートの先はDEM界か、ドミニオン界のアクロポリス(現在・DEMの占領下)辺りに繋がっていると思われます」

ホワイト「なる……」

西院「……それでは封印の準備をしますので、済みませんが暫くの間、敵を近づけないようにしてください」

フロース&ホワイト「了解」

 と、その時です。


フロースヒルデ「!! ホワイトさん! 上から来るわ!気をつけて!!」

 艦長が私に警告を発したと思うと……


謎の少女「……やらせない」

 近くの高台に、いつの間にかDEMの少女がいました。

 彼女の銃口は……


ホワイト「私に……!!」

 慌てて、クローキングで隠れようとしましたが……


SE:ドキューン!!

 時既に遅く、その銃口から青いレーザービームが私めがけて発射されました。

ホワイト(駄目……間に合わない……)

 クローキングの詠唱が終わるよりも早く、私の体はあの青い光線に貫かれる……

 私だけでなく、近くにいた艦長もそう思った事でしょう。

 しかし……


       うるんピア
西院「強制退行

 西院さんが突然、謎の呪文を唱えました。

 そして次の瞬間。


SE:プアアアアアアン!!

 私を貫くと思われていた光線は、何故か列車の警笛とともに後ろへ下がっていきました。

 そして……


謎の少女「GYAAAAAAA!!

 次の瞬間、この世のものとは思えない悲鳴を上げるDEMの少女。

 少女の銃まで退行し、行き場を失ったレーザーのエネルギーは銃内部で暴発。

 その結果、少女の銃は彼女の片腕と一緒に吹き飛んでしまいました。


フロースヒルデ「西院さん……今のスキルは、一体……? さっきのスキル、どう見てもシャーマンのスキルじゃ無いわよね」

 目の前で起こった理解不能な現象に、艦長は西院さんに思わず質問しました。

西院「詳しい説明は、また後ほどいたしますが……」


西院「先ほどの魔法は、『万物を逆再生する』……言い換えれば『無かった事にする』特殊魔法の一種です。

今の魔法はレーザービームを『逆再生』する事により、ビームをDEMさんの銃に押し戻す作用があったのです。

もっとも逆再生の結果次第では……先ほどのように二次災害が起き、DEMさんの腕と銃が吹き飛ぶような事故も発生しますが」

フロースヒルデ「なるほど……」

西院「しかし……封印作業中は先ほどの魔法を使って、お二方を守りする事は出来ません。

これは封印作業を開始する前に、回りのDEMさん達をなんとかしないと……」

 西院さんがそういいかけたその時です。

声「いや西院君、その必要はないよ」

 突如第三者の声がしたと思うと


 さっきまでDEMの少女がいた所に、藪先生の姿がありました。

藪「この辺のDEMと機械Mobは全て片付けたし、リーダー格の少女も拿捕(ティミング)しておいた。

さ、そのゲートから新手が出ないうちに、封印作業を」

 話を聞く限り、どうやら藪先生は西院さんと知り合いのようです。

西院「了解しました、藪姉様。 それでは……」


西院「偉大なる大妖精クービィ様…… 私に……どうか力を」

 西院さんはゲートの前に立つと、祈りを捧げ始めました。

 どうやら『大妖精クービィ』という偉い妖精さんの力を借りて、封印の術を施すみたいです。

 そして……


西院「ネッサ☆ インジョードベルソウヨビ・ド・アルシェ!!


SE:ゴオオオオオオオオオ!!

 西院さんが呪文を唱えた瞬間、突如轟音とともに周囲の空間がゆらぎ……



 そのゆらぎが収まった時には、すでに異世界へのゲートは跡形もありませんでした。

 そう、DEM界(もしくはドミ界アクロポリス)へのゲートは、無事に『無かった事』にされたみたいです。




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