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         日記第八回

(※)今回の日記には、ネコマタ(茜)入手イベントのネタバレを含みます。
また、一部画像(ヘッドロックのエミル関係の画像全般・akabanの名の付く画像ファイル)は、ライさんの許可を得て使っています

本日の日記担当:フロースヒルデ

某月某日 戦闘庭「フレイヤ」機関室

ミュー「でだ、山吹中佐。このレバーは……」



フロースヒルデ「あら、ミュー、こんな所にいたのね」

ミュー「お、フロースか。 珍しいな、こんな所まで来るのは」

フロースヒルデ「来るも何も、私を呼び出したのはミューの方でしょうが」

ミュー「ああ、そうだったな。済まん」

フロースヒルデ「で、ミュー。一体何の用なの?」



ミュー「単刀直入に言うが……明日から2〜3日ほど、休暇を貰えないか? 国許の方で急用ができてな。

今、あたしが居ない間も『フレイヤ』を動かせるよう、山吹中佐に機関長の仕事を引き継いでいた所だ」

フロースヒルデ「元より、今は平時だから……断るつもりはないわ。 

大体、ミューは普段から働きづめなんだから…… 休める時に休んでおきなさい」

ミュー「済まんな、フロース、恩に着る。

あと、言っておくが、『フレイヤ』で送ってくれなくていいぞ。 燃料であるモーグ炭も貴重品だから、個人的な用事で使うのも勿体無いからな」

フロースヒルデ「そう……」



フロースヒルデ「それにしても、ミューが国許の用事で帰郷するなんてなんて久しぶりね」

元帥「そうだね。 少なくとも、この『フレイヤ』が完成してからは一度も帰郷してないよね、ミューちゃんは」

ミュー「そうだな…… 前に帰ったのは、確か山吹中佐が仲間になった直後だったな」

 今はそうでも無いが、昔はミューは良く「国許の用事」という理由で、私の元を離れる事が良くあった。

 彼女の言う『国許の用事』の具体的な内容は、実は私や元帥も知らない。

 一度だけそれとなしに聞いてみた事があったが、適当にはぐらかされてしまった。

 それ以来、私も元帥もミューの『用事』については、深くは聞かない事にしている。

フロースヒルデ「さて、私はちょっと道場破りに行ってくるから、ちょっと留守番お願いね、ミュー。

今日いっぱいは、ミューも『フレイヤ』にいても大丈夫よね」

ミュー「ああ。 しかしフロース、この大陸に『道場』なんて代物あったか?」

フロースヒルデ「サウスダンジョンの1Fにデバステイターっていう人間系モンスターがいるでしょう。

南軍長官から聞いた話だと、あそこ、彼らの『剣術道場』なんですって」

ミュー「剣術道場ねぇ…… ブリキングとかスペルキャスターとか、明らかに剣術には縁の無い奴らも大量にウロウロしているような気もするが……

そもそも、情報の出所があのヘタレな南軍長官という点からして、眉唾物だな……」

フロースヒルデ「何かの冗談だとは、私も思うけど……」

ミュー「……まあいいや。 だがくれぐれも、油断だけはするなよ、フロース」

フロースヒルデ「わかってるわ。 じゃあ、いってくるわね、ミュー」

元帥「いってきます〜」

ミュー「ああ、気をつけてな」

 私はミューに別れをつげ、サウスダンジョンへと足を進めた。



翌日 戦闘庭『フレイヤ』 甲板

S・ミュー「じゃあ、ちょっと出かけてくる。 留守の間、よろしく頼むわ、フロース」

フロースヒルデ「わかったわ。こっちは任せて、ミューは自分の用事に専念して頂戴」

ミュー「了解。 じゃあな、また会おう」

 ミューはエレベーターに乗り、下界へと下りていった。

フロースヒルデ「……」

元帥「行っちゃったね」

フロースヒルデ「まあ、2〜3日したら会えるんだから、そんなおセンチモードに入る必要もないわ。

さて…… これから書類決済やったら、また狩りにいくかな」

 私は書類仕事をすべく、元帥を伴って艦橋へと戻っていった。


ジークウルネ「……では、少将もミューさんの事を?」

菫少将「ええ……」



フロースヒルデ「あら、ジーク……それに菫少将」

 艦橋に戻ると、ジークと菫少将が何やら話をしていた。

 もっとも、ジークはオペレーターという情報を扱う立場上、艦内では情報参謀の菫少将と一緒に行動している事が多い。

 なので、ジークと菫少将がお喋りしているのは、別に珍しい事でも何でもなかった。



ジークウルネ「あ、姉さん」

菫少将「艦長……それに元帥。ミュー殿はもう、出立なされたのですか?」

フロースヒルデ「ええ。 今、見送ってきた所よ」

菫少将「そうですか……」

 どういう訳か、菫少将の表情は怖いほど真剣だった。 ジークの方も、理由は定かではないが緊張したおももちである。

フロースヒルデ「ねえ二人とも、一体何を話していたの?」

ジークウルネ「ミューさんの事ですよ。 あの人はどこの生まれで、どんな事をして育ったのかを二人で話していました」

フロースヒルデ「そう…… で、そんなお話を、何でそんな緊張したおももちでやらないとやらないといけない訳?」

 私のといかけに、ジークも菫少将もすぐには答えなかった。

 ややあって、菫少将が口を開いた。



菫少将「艦内のチームワークが乱れるのを防ぐため、今までは伏せていましたが……

情報参謀として、元帥や艦長に報告せねばならぬ事があります」

フロースヒルデ「報告せねばならない事……」

元帥「それは一体……?」

菫少将「それは……ミュー機関長の素性が不明、という事です」

フロースヒルデ「ミューの素性が不明……」

菫少将の言うとおり、私は出会う前のミューの事について、殆ど何も知らなかった。

彼女本人に聞いても、適当に誤魔化されるのが常であった。

しかもその手の話をすると、ミューが露骨に言いたくなさそうな表情をするので、私としてもあまり深くは斬り込めなかったのである。

菫少将「艦長。そのご様子ですと、どうやらミュー殿の素性が不明である事は、前々からご存知のようですね」

フロースヒルデ「ええ……」

元帥「あ、でも前に、ミューちゃんの出身地だけなら、聞き出した事があるよ」

菫少将「ミュー殿の出身地……元帥、それはいずこに……」

元帥「トンカの出、とは聞いた事があるけど……。 それ以上のことは頑として口を割らなかったよ。

そもそも、あたし達と会う前の事とか、故郷の事とか聞こうとするとミューちゃん、とても言いたくなさそうな顔をしてくるから……」

菫少将「そうですか……」



ジークウルネ「私も、前にミューさん本人にトンカ出身だという事は聞いたことがありますね。

で、姉さん、元帥。 話は飛びますがミューさんとはどういう経緯で会ったのですか?」

フロースヒルデ「アップタウンで『粘土を掘ってくれる専属のタタラベさん募集』というコメントだしてたら、それを耳にしたミューが

私の元へ来てね。

『タタラベへの転職試験に必要な「鉄のナゲット」3つくれたら、専属のタタラベとして働いてもいい』ってもちかけられたの」

ジークウルネ「なるほど……」



菫少将「ミュー殿がアクロポリスにふらりと現れ、艦長と会った後の事は、艦長も元帥もご存知かと思います。

しかし、それ以前の経歴は謎だらけです。

彼女が故郷と言うトンカは元より、他の4大国の出生記録を調べてみましたが……4大国やトンカの出生記録のどこにも、

『ミュー』という名はありませんでした」

フロースヒルデ「そう……」

菫少将「さらに付け加えますと、彼女には『ジョー』という名のマシンナリーの叔父がいると以前聞いたことがありますが……

マシンナリーギルドの名簿を当たってみても、『ジョー』という名のマシンナリーはいませんでした」

フロースヒルデ「……」

元帥「で、菫少将はミューちゃんに何をしたい訳? まさかとは思うけど、『素性が不明』という理由で追い出すつもり?

今の『フレイヤ』がミューちゃん抜きだと回んない事くらい、菫少将だって……」

菫少将「それは承知しておりますし……今のところは、ミュー殿を追い出すという考えもありません。元帥」

元帥「なんだ……良かった……」

菫少将「ただ、情報部門の責任者としましては…… 素性の分からぬ者が艦内にいる事は、不安の種以外の何者でも無い事もまた、事実です。

いつ情報漏えいが起こるか、ヒヤヒヤ物ですからね……」

フロースヒルデ「なるほど……

……少将。 結局、ミューの一件に関して私や元帥に要求したい事は、一体何?」



菫少将「私が要求したい事はただ一つ…… 『ミュー殿がどこの何者なのか、はっきりさせる事』です。

素性さえはっきりすれば、彼女がどこぞのスパイというので無い限りは、追い出す必要性を認めません」

フロースヒルデ「……わかった、菫少将。 貴女の気持ちはよくわったわ

じゃあ、早速ミューの素性調査を始めましょう。 彼女がこの艦に戻ってくる前に、カタを付ける事にします。

万が一彼女にこの調査の事を感づかれると、まずい事になるかもしれないからね」

 私の宣言に、皆うなづいた

 実の所、私もミューの素性については興味があった。

 タタラベの身にして、各種の高度な機械類を組み立てられる技術は、どこで身につけたのか……



ジークウルネ「ミューさんの素性調査を始めるとしても…… どこから手をつけていけばいいのでしょう?」

菫少将「まずは彼女が故郷と言うトンカに行きましょう。 帝国情報部の調べでは、あそこで随分前に、ミュー殿に似た女性を見かけたとの

目撃証言がありますゆえ」

フロースヒルデ「そう…… じゃあ、早速トンカまで向かいましょう。 機関長の業務は山吹中佐が引き継いでいるから、普通に『フレイヤ』を

動かす分には、問題は無いはずよ。

では、総員、出航準備に」

 数分後、『フレイヤ』はアクロポリスを離れ、一路トンカへと向かって行った。




トンカ メインストリート

元帥「トンカ来るの、久しぶりだね、フロースちゃん」

フロースヒルデ「そうね…… それにしても、トンカも随分と寂しくなっちゃったわね。

……NPCくらいしか人いないし」

 トンカ実装直後と比較すると、トンカ市内にいる冒険者の数は目に見えて減っていた。

 やはり、近くに狩場が無い事には、冒険者達を繋ぎ止める事は難しいのだろう。

フロースヒルデ「さて、ミューの素性調査を始めるのはいいとして、どこから手をつけていこうか?」

元帥「まずは聞き込み調査からはじめようか。 ミューちゃんに似た人を見かけた人かいないか、確かめてみよう」

元帥の言葉に私はうなずき、トンカ市内の聞き込み調査を開始した。



リタの工房前

フロースヒルデ「さて、次はこの工房の人に話を聞いてみましょう。 ……たいした話は聞けないかもしれないど」

 既に何人かのNPCに話を聞いたが、今のところ、めぼしい話は聞かれていなかった

元帥「フロースちゃん、ドンマイ。 地道にやっていけば、きっと道は開けるよ」

 元帥も根拠の無い応援をしてくれる。

 私は、半ば惰性に任せて、工房の中へと足を踏み入れた。


リタの工房 内部

リタ「あのね、ハレルヤ。だから……」

ハレルヤ「……でだな、たぶんディスプレーサのシール部分が問題だと思うんだな。

高圧に耐え切れないから、軸受けがすぐに痛んでしまうんだな。 母っちゃ、どうすればいい?」

リタ「あ、あのね、ハレルヤ。 ママはマリオネットマイスターよ。 飛空庭のエンジンの事は……」



フロースヒルデ「お取り込み中の所申し訳ありません。 少し、尋ねたい事が……」


リタ「あら、冒険者さん。 この子はゴーレムの『ハレルヤ』。

あたしがこしらえたマリオネット・ゴーレムで、飛空庭職人をめざしているの」

 工房の主、リタさんは、話しかけるなりいきなり自分の作ったゴーレムの紹介を始めた。

フロースヒルデ「あの……お話を……」

リタ「この子、どうしても飛空庭のエンジンを自分で作りたいって……。

リビルドされたエンジンなら、このトンカにいくらでもあるのに……」

 先方はこっちの都合も考えずに話を進める。 

リタのハレルヤ「うんにゃ、オラは自分がこさえたエンジンで大空を飛び回りたいんだな」

 と、そこでハレルヤは私の方を向いた。

ハレルヤ「……?? 母っちゃ。この人は母っちゃの知り合いなのかな?」

リタ「ううん、ママのお客さんよ。 ママ、これからお客さんの相手をしなくちゃいけないから、じゃまをしちゃ駄目よ」

ハレルヤ「じゃあ、このお客さんに聞くんだな♪ スターリングエンジンのピストン軸磨耗がどうしても……」

わかるかっ!!ボケェ!!……と思わず叫びそうになったが、声に出す寸前の所で押し込めた。

 そんな事聞かれてすぐに答えられる人間は、ミューかミナファさん所のフィアノちゃんくらいものだろう。

リタ「ハレルヤ、そんな事お客さんに聞いても分かる訳ないでしょう」

ハレルヤ「じゃあお客さんに、飛空庭に詳しい人の所まで連れて行ってもらってもいいかな?」

リタ「ちょっとハレルヤ! お客さんにそんな事頼める訳ないでしょ!!」

フロースヒルデ「……」

 勝手に話を進める2人。だが、ここで元帥が耳打ちをしてきた。



元帥「フロースちゃん、折角だから連れて行ってあげようよ。 トンカの街に詳しい人の協力があっても、損は無いと思うな」


フロースヒルデ「……わかりました。 ハレルヤさん、リタさん。その依頼、引き受けましょう。 但し……」

リタ「ただし?」

フロースヒルデ「実は私、とある人物の素性調査をしているのですが…… この写真の人、このトンカで見かけた事はありませんか?

S(スクラップ)・ミューという人なんですけど……」

 私は、リタさんとハレルヤにミューの顔写真を見せた。

リタ「うーん……私は見覚えが無いわね…… ハレルヤは?」

ハレルヤ「いや、オラも無いだな」

フロースヒルデ「そうですか……」

リタ「この写真……申し訳ないですけど少し貸してくれませんか? 私の方でも、この写真の人物の素性を探ってみます」

フロースヒルデ「え、いいんですか?」

リタ「何、ハレルヤを案内してくれるお礼と思って構わないわ。 他のゴーレム達も動員して、捜索に当たらせる事にするわね」

フロースヒルデ「すみません、わざわざ……。 でも、私が彼女の素性を調査しているという事は、くれぐれも本人に悟られないようにしてください。

万が一本人に感づかれると、まずい事になるので……」

リタ「わかったわ。

ハレルヤ、ちゃんとお礼を言って。 この方の邪魔にならないように、アイテムになって連れて行ってもらうのよ」

ハレルヤ「わかった。 じゃあお客さん、よろしくな」

 ハレルヤはアイテム化し、私のポケットの中に納まった。

リタ「飛空庭に詳しい人については、飛空庭大工場にいけばいいと思うわ。 場所は……」

フロースヒルデ「ああ、大工場の場所ならわかります。 以前、あそこで飛空庭の改造をしてもらった事があるので」

リタ「そう…… じゃあ、すみませんがハレルヤの事、よろしくお願します」

 リタさんに見送られ、私は工房を後にした。



ファーイースト街道


飛空庭職人「はぁ……忙しい忙しい……」



フロースヒルデ「すみません……少し、お話をうかがいたいのですが……」

飛空庭職人「ん? 君は……」

 結局、私達はトンカから離れたファーイースト街道までやってきた。

 何故こんな所まで来たのかというと、大工場には現在飛空庭のエンジンに詳しい技師がいないという事なので、

紹介されたのが、街道にいるこの職人さん…… 以前、『フレイヤ』……の母体となる飛空庭を組み立ててくれた職人さんだった。

 まあ、早い話がたらい回しにされたのである。

飛空庭職人「おや、君はいつぞやの……。 君の飛空庭の調子はどうだい?」

フロースヒルデ「ええ、すこぶる良好です」

飛空庭職人「そうか……それは良かった。 で、今日は一体何の用だい? ひょっとして、飛空庭のキーをなくしたのかい?」

フロースヒルデ「いえ、そうでは無いんです。実は……」

ハレルヤ「あ、冒険者さん。事情はオイラが説明するだ」

飛空庭職人「わっ! ……と、何だ、マリオネット・ゴーレムか。 そのお嬢ちゃんのポッケの中にいるんだね」

ハレルヤ「そだ。 実は……」

 そういうとハレルヤと飛空庭職人さんは、なにやら専門的な難しい話をはじめた。

飛空庭職人「……ふぅん、なるほど。 それはシーリング材の問題だね。

硫化剤の混合率を変えれば、粘度が上がってシリンダー内圧が保てるはずだよ。

レシピを紙にかいておいたから、この通りに作るといい」

ハレルヤ「わ〜 ありがとうなんだな」

 ハレルヤは嬉しそうに、職人さんのメモ用紙を受け取った。



フロースヒルデ「ところで職人さん、話は変りますが……」

飛空庭職人「ん? 何だい?」

フロースヒルデ「私の飛空庭を作ったとき……私の仲間で、ミューという紫髪の女の子が、職人さんの仕事にやたらと口出ししていたの……

憶えてませんか?」

 フレイヤの母体になる飛空庭を作った時、ミューは飛空庭組み立て現場にちょくちょく足を運んでは、やたらと職人さんの仕事に

口出ししていたのを憶えている。

飛空庭職人「ああ、あの子だね。 タタラベの身にして高度な機械技術を持った、気の強い子。

長いことここで冒険者の為の飛空庭を作ってはいるけど、あそこまであれこれ注文を付けられた経験は無いよ」

フロースヒルデ「すみません。あの時はミューがご迷惑を……」

飛空庭職人「いや、謝罪する筋の事じゃないよ。 むしろ彼女の持つ技術の数々には、僕にとっても得る所が多かったからね。

素人があれこれ口出しするのは困るけど、彼女のような高度な技術を持った人の口出しなら、大歓迎さ」

 職人さんはミューの口出しを嫌がるどころか、むしろ歓迎していたようだ。

 とりあえず、心の中で胸をなでおろした。

飛空庭職人「それで……そのミュー君がどうかしたのかい?」

フロースヒルデ「実は、さる事情で、ミューの素性を調べているのです。

本人の話だと、ミューはトンカの出身だそうですが……」

飛空庭職人「彼女の素性については、僕の方が知りたいくらいだけど…… 一つだけいえる事があるよ」

フロースヒルデ「え? それは……」



飛空庭職人「彼女がトンカ出身……というのは、どうも嘘っぽいね」

フロースヒルデ「えっ……どうしてそうはっきり言えるのですか?」

 職人さんの思いがけない指摘に、私は狼狽した。

飛空庭職人「何って、彼女はトンカで長い事技師をしていた僕でさえ知らない技術を多数持っていた……

『盗撮X線』の遮断フィルムや、超極小の機械部品の製造技術等…… どれもこれも、トンカには無い技術だった」

フロースヒルデ「なるほど……」

飛空庭職人「反対に、彼女はトンカの技師なら誰でも知っているような事も、知らなかったりする。

特にマリオネット関係の知識に、彼女は暗かったよ。 憑依して使う物という事すら、僕が教えるまで知らなかったみたいなんだ」



フロースヒルデ「むぅ……」

 ミューは私達に何かを隠している。 私達に嘘を言ってまで彼女が隠そうとしている事とは、一体何だろう……

飛空庭職人「まあ、僕に言える事はこのくらいだよ。 あまりお役にたてなくてごめんね」

フロースヒルデ「いえいえ、いいんですよ。 情報提供、どうもありがとうございました」

ハレルヤ「お客さん、母っちゃが心配してると思うから、そろそろかえらねぇか?」

 ポケットの中からハレルヤが言う。

フロースヒルデ「そうね…… じゃあ職人さん、お世話になりました」

 私は職人さんにお礼を言うと、トンカへ向けて来た道を戻った。



再び トンカ リタの工房

ハレルヤ「母ちゃ、今帰っただよ」

 と、言うなり、ハレルヤはアイテムから元の姿に戻った。



リタ「まあ、おかえりなさい。 あまり遅いから心配していたのよ。

まぁ……アクロニア大陸まで行ってきたの?」

ハレルヤ「ああ、そうだよ」

リタ「……ハレルヤをどうもありがとうございました。」

ハレルヤ「うん、お客さんのおかげだよ。

お客さんのおかげで、飛空庭作りが進みそうだよ〜♪ ありがとう、お客さん」

フロースヒルデ「ど、どういうたしまして……」

リタ「あ、お客さん。 例の紫髪の女の子の件なんだけど…… まだ、これといった情報がつかめてなくてね。

……お役に立てなくてごめんなさい」

フロースヒルデ「いえ……別にいいんです。 こちらこそ、無理なお願いしてしまって……」

リタ「いえいえ…… 調査は引き続き行うかわ。 何か分かったら、ウィスパー通信で連絡するわね」

フロースヒルデ「わかりました…… 重ね重ねのご好意、感謝します」

ハレルヤ「あ、そうだお客さん。話は飛ぶんだけど…… オラの飛空庭にこないか?」

 唐突に、ハレルヤが話題を切り替えた。

フロースヒルデ「え、いいんですか?」

ハレルヤ「ああ、いいだ。 正体するべ。 オラの友達、ネコマタの茜どんもまってるだよ」


元帥「え……茜……」

突然、元帥がつぶやいた。

フロースヒルデ「え、元帥…… ハレルヤさんの友達、知ってるの?」

元帥「うん…… でも、茜ちゃんて名前なんて、ありふれてるからな……

まあとにかく、ハレルヤさんの飛空庭にいってみようよ」

元帥に促されるまま、私はハレルヤさんの飛空庭へと足を運んだ。



ハレルヤの飛空庭



ハレルヤ「オラの飛空庭にいらっしゃいだよ〜」

フロースヒルデ「あ、はい……」

ハレルヤさんの飛空庭に到着すると、ハレルヤと、ツインテールのネコマタ一匹が出迎えてくれた。

フロースヒルデ「それにしてもブーストタイプの飛行帆使っているなんて、珍しいですね。

あれは確か、高価なブーストを一体使ったはずじゃ……」

ハレルヤ「いや、お客さん物知りなんだなぁ。 これの母体となるブーストは、母っちゃがどこかから手に入れてきてくれたんだな」

フロースヒルデ「なるほど……」



ネコマタ「ちょっとあんたたち! 人の庭に何土足で上がりこんでるの!!」

 突然、ネコマタが私達に絡んできた。


元帥「土足って…… フロースちゃんもあたしも、地面に足はつけてないよ。 ね、茜少佐」

 だが、元帥はネコマタ側の恫喝にまったく動じる様子も無く、怒鳴ってきたネコマタに反論した。

茜少佐「げ、元帥閣下……  け、敬礼!!

 元帥に声を掛けられた途端、怒鳴ったネコマタの方は元帥の顔を見るなり態度が豹変した。

フロースヒルデ「元帥、このネコマタは……?」

元帥「彼女は茜少佐。 あたしの元部下で、航空長(船で言うところの航海長に相当)やってたんだよ。

ただ無類のバクチ好きで、よくトラブル起こして営巣送りになってたけど……」

茜少佐「閣下…… そんな恥ずかしい話は、しないでくだいませ……

ところで閣下、そちらのタイタニアの方は?」

元帥「彼女はフロースヒルデ。 あたしの……そう、パートナーって所かな」

ハレルヤ「あ、茜どん。 ちょっとエンジンの調整するから、手伝ってくれないかな」

茜少佐「うん、わかった! 閣下……それにフロースヒルデ様。エンジンの調整をしますので、暫くお待ち下さい」

茜少佐はエンジン部の方まで向かっていった。



数分後……

ハレルヤ「エンジンの調整が済んだんだな。 これで、オラの飛空庭が安定して浮くようになるんだな。

ちょっとエンジン掛けてみるだよ」

 湧き上がるワクワク感を押さえようともせず、ハレルヤはエンジンのスイッチを入れた。

 その途端、エンジンが出力が上がる。

ハレルヤ「いいぞ……その調子で」

SE:ドーーーーン

 突如、爆発音と共にエンジンが急停止した。

ハレルヤ「うう……失敗なんだな」

茜少佐「だ、大丈夫?ハレルヤ? どこか痛む所無い? リタを呼んでこようか?」

ハレルヤ「オラ、大丈夫だよ〜。 『お客さん』も大丈夫だったかい?」

元帥「あたし達は大丈夫だよ。 だから、心配しないで」

ハレルヤ「そうかぁ……。 どうもターボエンジンが安定してないみたいなんだな……

きっと、カリカリチューンしているのが原因だよ…… オラ、この飛空庭をアクロニアで一番早い飛空庭にしたいだよ〜!」

 ハレルヤがしきりに独白する。

茜少佐「アクロニアで今一番早い飛空庭は、ギルド評議会の孫娘が所有してるって、小耳に挟んだ事があるけど……

元帥閣下はご存知ないですか?」


元帥「評議会のお孫さんっていうと……マーシャちゃんの事だね、NPCの。

ね、フロースちゃん」

フロースヒルデ「ええ…… といっても、ほんの顔見知り程度だけど……」

 評議会の孫娘、マーシャ嬢とはチュートリアルや菫少将を仲間にする際に何度か顔をあわせたことがある。

 故に、全く知らない仲という訳ではない。

ハレルヤ「お知り合いなら、早速案内してほしんだな。 また、よろしく頼むんだな」

 というなり、ハレルヤは再びアイテム化し、私のポケットの中に納まった。


茜少佐「ちょっと待って!今度はあたしも行く! ハレルヤだけじゃ足りないもん!!

……元帥閣下、フロースヒルデ様、同行の許可をお願します」

元帥「元より、断る理由はないよ。 ね、フロースちゃん」

フロースヒルデ「そうね……。 よろしくお願いね、茜少佐」

茜少佐「は、はっ……」

元帥「まずは、アクロポリスに戻って、評議会長のルーランさんに会おうよ。 彼女なら、マーシャ嬢の居場所を知っていると思うから」

フロースヒルデ「了解。じゃあ、早速出発しましょう」

 私は時空の鍵を使い、一路アクロポリスに戻っていった。



アクロポリス・アップタウン上空 マーシャの飛空庭


マーシャ「エミル…… 他の女の子から見境無くチョコをもらったりするから、毒を盛られたりするのよ……

……って」


フロースヒルデ「こんにちわ、マーシャ。 久しぶりね」

マーシャ「あら、誰かと思ったらフロースヒルデじゃない。 よくここが分かったわね」

フロースヒルデ「ルーランおばさんに聞いたのよ。 そしたら、アップタウン上空の自分の飛空庭にいるって」

マーシャ「そう…… それで、私に何か用なの?」


ハレルヤ「お邪魔します、なんだな

マーシャ「ひゃっ!!

 突然、ハレルヤと茜少佐がマーシャのすぐ右隣に姿を現した。

 思わぬ珍客の出現に、マーシャは腰を抜かした。

マーシャ「もう、びっくりしたぁ……」

フロースヒルデ「ごめんなさい、マーシャ。 で、マーシャへの用なんだけど……」

ハレルヤ「ああ、それはオラが説明するだ、お客さん」

 ハレルヤは、自分の飛空庭のエンジンが安定しない事、それとマーシャが最速の飛空庭を持っていると聞き、

アドバイスを求めに来たのだという事をマーシャに伝えた。

マーシャ「ふぅーん…… 話を聞く限りだと、あたしと同じ『ブースト飛空帆』タイプなのね」

ハレルヤ「んだ」

マーシャ「使っている部品も問題なさそうだし、そのくらいチューンしてあれば、凄い速さで飛びそうな気がするな。

……あ、そうだ。コンピューターの設定が良くないのかも」

ハレルヤ「セッティング……? ターボエンジンのか?」

マーシャ「うん。 タービンの設定が良くないと、エンジンの組み上げがどんなに良くても、上手く動かないんだって。

ROMを差し替えればいいんだけど…… それが中々手に入りにくい所にあるの。

私はマーチャントギルドの仲間に取りに行ってもらっちゃった♪」

ハレルヤ「そのROMはどこにいれば手に入るのかな? 連れてってほしいだ〜よ」

 ハレルヤがマーシャに、図々しいお願いをする。

マーシャ「う〜ん……構わないけど……。フロースヒルデ」

フロースヒルデ「え?」

唐突に、マーシャが私の方を向いた。

マーシャ「その場所は『光の塔』なの。 だから、護衛、お・ね・が・い……」

フロースヒルデ「お願いって……」

ハレルヤ「その光の塔に出発するだ〜よ〜 マーシャどん!

マーシャ「アイサ〜♪」

フロースヒルデ「ちょ、ちょっとまって……」

 人の話を全く聞かずに、マーシャは飛空庭を『光の塔』まで飛ばした。

 もっとも、光の塔には通常だとバカ高いマーチャントギルドの飛空庭を使わないと渡航出来ない。

 なので無料で塔につれてってくれると考えれば、これはむしろラッキーな事だと思い、私はこれ以上、彼らの会話に口を挟むのはやめた。



光の塔


マーシャ「ROMは塔の中の『機械のかたまり』から発掘できるそうよ。 

でも……発掘してくれたギルドメンバーは、持ち帰った塊の山から、それを見つけたから……

どこで見つけたのかは分からないの」



フロースヒルデ「そう…… もし上層とかで拾ったのなら、ちょっと私一人の力じゃ厳しいわね……」

 光の塔上層部はLv80台の猛者達でさえ、単独で狩りをするには厳しい所と聞く。

 まだ転職したてのブレイドマスターの身には、かなり荷が重い。

声「何なら……手伝ってやろうか?」

 突如、背後から男の声がした。

 振り向くと、よく見知った格好……かの「エミル君」に良くにた格好した男が、こちらに背を向けて風景画を描いていた。

マーシャ「あ、エミル…… もう、具合はいいの?」

 マーシャがエミルにかけよろうとする。

 しかし次の瞬間、この場にいる全員に戦慄が走る事になる。


(※)この画像はライさんに許可を得て転載しています。

エミル?「なんだ、マーシャもいたのか……」

エミル?以外全員「!!

 振り向いたエミルの形相は、まさに『人間以外の化け物』そのものであった。


                 中編へ続く

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