日記第16話
本日の日記担当:Dr・藪


某月某日 アルケミストギルド


Dr・藪「……お邪魔するよ」

 とある日の昼下がり、私はとある用事があって、アルケミストギルドへと足を運んだ。


アルケミストマスター「やあいらっしゃい。アルケミストギルドへようこそ…… って藪先生じゃないですか。

学会の時はいつもお世話になっております」

 実の所、ここのアルケミストギルドマスターと私とは、学会の折に何度か顔をあわせた事がある。

 最近では一緒に酒を飲みに行く事も多い。

 彼の方が私より年下という事もあり、ギルドマスターという要職にありながら、私に対しては口調が丁寧であった。

アルケミストマスター 「で、先生。 今日は一体何の用で?」

Dr・藪「……今日はアルケミストへの転職試験を受けに来たのだよ。

ああ、もちろん医者を廃業するという意味では無くて…… 農家(ファーマー)からの転職という意味だが」

 エミルの世界の薬事法には、『薬の調合をするには農業の経験を積まなければならない』という、非常に理解に苦しむ条文が存在する。

 このため、医師免許を持つ私でさえ、今までは(表立っては)調薬等が出来ず、非常な不便を強いられていた。

 私が医者という本業を持ちながら農家をやっているのは、この理由による。

アルケミストマスター「なるほど……やっと先生も、アルケミストへの転職をする時が来ましたか」

Dr・藪「ああ。 これでようやっと、好きでもない農業活動からおさらば出来る」

アルケミストマスター「おさらば……ですか。 他のファーマーの方から、さぞかし嫌味を言われたんでしょうね……」



Dr・藪「……ファーマー同士の集まりのたびに、ネタブログ界の重鎮ファーマーさん達になじられたさ。 

特に常時『死ぬほど怪しい眼鏡』をかけた某女性からは、会うたんびに『少しは農業に対する興味を持ちんしゃい』とか言われたよ」

アルケミストマスター「そうですか……

話を元に戻しますが…… いかに先生といえど、アルケミストへの転職試験は受けて頂きます。

が……」

Dr・藪「……が、何かね?」 

アルケミストマスター「ここで話すのも何ですので、隠し部屋に移動しましょう」

 と、言うなり、マスターは手持ちのリモコンを操作し……背後のタンスを動かした。

 タンスの裏には、隠し部屋への入り口がぽっかりと口をあけていた。

アルケミストマスター「……こちらです。 先生、どうぞ」

 私はアルケミストマスターに言われるがまま、隠し部屋へと移動した。


アルケミストギルド 隠し部屋


Dr・藪「で、マスター。 転職試験の内容を、そろそろお聞かせ願いたいのだが」

アルケミストマスター「通常、アルケミストへの転職試験は私の出した問題を回答していく……という内容なのですが……

医学博士の肩書きを持つ先生にとっては…… 正直言って簡単過ぎる問題ばかりかと思われます」

Dr・藪「その点については別に遠慮はいらないよ。 楽に試験突破できれば、それに越した事は無いからね」

アルケミストマスター「……左様……ですか」

 アルケミストマスターは苦笑いを浮かべ、続ける。

Dr・藪「で、マスター。 アルケミスト転職試験の折、隠し部屋に連行される等という話は聞いた事がないのだが……

私が受ける転職試験は……一般のファーマーが受ける試験とは別物とみていいのだね」

アルケミストマスター「ええ。 先生だけの特別仕様の課題です」

 私としてはそんな無用なVIP待遇等して欲しくはないのだが、文句を言った所で仕方が無いので、あえて黙っていた。

Dr・藪「して、その課題の中身は……?」


アルケミストマスター「一つ……先生に仕掛(殺し)をお願いしたい

 アルケミストマスターの口から、私のような裏社会の住人しかしらない『仕掛』という用語が飛び出した時、私は内心驚かずにはいられなかった。

 が、すぐに持ち直し、マスターに言い返す。


Dr・藪「仕掛……か。 その単語を知っているという事はマスター。 貴方も私と同じ、裏社会の住人のようだね」

アルケミストマスター「ええ。 私は表向きはアルケミストギルドのマスターをしていますが……

『蔓(つる)』の副業もやって研究費を稼いでいるんですよ」

 『蔓(つる)』とは、暗黒街の用語で『殺しの依頼人』と私のような仕掛人(非合法暗殺者)の元締を勤める人物の事だ。

 原則的に、仕掛人は直接依頼人から仕事を請ける事はせず、この『蔓』を介して仕事を請け負うのが常道である。

Dr・藪「マスター。 私が仕掛人であるという情報、どこから得た?」

アルケミストマスター「スカウトマスターからですよ。 あの人はいまでこそスカウトギルドの長を務めていますが……

ドミニオンの世界にいた頃は、『仕掛人』としても活動していたと聞きます。

あの人の話では、先生とも一緒に『仕掛』をやった事があると聞き及んでおりまして……」

Dr・藪「なるほどな。彼女の口添えか……。

で、まずは仕掛ける相手の名前をお教え願おうか」


アルケミストマスター「今回の殺しの相手は、人間ではありません。 ドラゴンです」

Dr・藪「ドラゴン……ね」

 仕掛人のターゲットは、何も広い意味での『人間』(エミル・タイタニア・ドミニオン・その他少数民族)に限った事では無い。

 時にドラゴン退治等の害獣駆除の仕事が舞い込んで来る事もある。

 特にドラゴンは生息数が少なく、近頃はみだりに傷つけたり、殺したりすると動物愛護団体が暴動を起こす始末である。

 なので、行政機関が秘密裏に『蔓』を通じて、仕掛人にドラゴンの始末を頼む事も、今日では決して珍しい事では無い。

アルケミストマスター「ご存知かもしれませんが、伝説のモンスターであるドラゴンの能力は、他のモンスターのそれなど比ではありません。

たとえば、このサイトで出てきたドラゴンの能力値は……」

 ステータス
 HP250000
 ATK2300
 M.ATK3000
 S.HIT320
 L.HIT200
 DEF500
 M.DEF400
 S.AVOID200
 L.AVOID200

アルケミストマスター「……と、こんな具合です。 この能力を見れば分かるように、正面からぶつかれば、L90の廃人どもが束になっても

敵うものではありません。

スカウトマスターから聞きましたが……先生はドミニオンの世界にいた頃、何度かドラゴンの始末に成功した事があるとか……」

Dr・藪「ああ、その通りだが……

で、その仕事……急ぐのか?」

アルケミストマスター「ええ。 目標のドラゴンはファーイーストの山奥に住んでいるのですが……

近頃、イーストダンジョンの貴重な薬草類が取れる区域まで進出して来て…… 当ギルドのメンバーや一般の冒険者にまで危害を加えだしています。

出来る事なら……今月中に片を付けて頂きたい」

Dr・藪「しかし……ドラゴン退治の報酬がアルケミストへの転職だけとは……どうも割に合わない気がするな」

アルケミストマスター「勿論、アルケミストへの転職許可とは別に……報酬もきちんとお支払いします。

報酬は前金が1.5M……成功報酬が1.5Mといった所でいいでしょうか?


Dr・藪「ふむ……そうか……」

 私はしばし、考え込んだ。

アルケミストマスター「……お願いしますよ、先生。 先生が駄目となると、後は一族の某『死ぬほど怪しい眼鏡をかけた中年女性』

依頼するしかありません。

しかし、彼女とてドラゴン退治を請け負ってくれるという保証はありませんし…… そもそも彼女は、『仕掛人』ではありませんので……」

Dr・藪「……いいのか? 彼女……母者さんの事を中年女性だなんて呼んで」

アルケミストマスター「大丈夫ですよ、先生。 前にタイタニアの天使長が母者さんそっくりの幻影を作って遊んだ時だって……

一族の人たちは結局、何の報復行動も取らなかったじゃないですか。

その事を考慮すれば、今回だって大丈夫ですよ」

Dr・藪「……だといいのだがね。 念のため、身の安全には気をつけたまえよ、マスター」

アルケミストマスター「ええ、わかっています。

……で、先生。この依頼、引き受けてくれますか?」

Dr・藪「ふむ……」


Dr・藪「あんなうすらでかい爬虫類風情に、母者さんの手を煩わせる事もあるまい。

……いいだろう。 その仕事、引き受けた」

アルケミストマスター「ありがとうございます。先生。 これは半金の1.5Mになります」

 私はアルケミストマスターから半金の1.5Mを受け取った。

Dr・藪「では早速……実務的な打ち合わせに入るとしようか」

アルケミストマスター「はい、先生」

 私はアルケミストマスターと小一時間ほど打ち合わせをした後、ギルドを後にした。


戦闘庭フレイヤ 艦橋


Dr・藪「ただいま……」


S・ミュー「よ、藪。 おかえんなさい」

 艦橋に入ると、機関長のミューが出迎えてくれた。

Dr・藪「フロース君とウルネ君の姿が見えないが……彼女達はいまどこに?」

ミュー「あいつらなら今、下の居住区だが……あいつらに何か用があるのか?」

Dr・藪「いや、特に無い」

ミュー「そうか…… で、藪。 一つ、あんたに伝えておきたい事があるんだ」

Dr・藪「伝えておきたい事? 何かね、唐突に?」

ミュー「あんた、惑星マーズで始めてあたしに会った時…… 自分の飛空庭が難破したって話、してたよな」

Dr・藪「ああ、その通りだが。 ちなみに、私の飛空庭の残骸は今も、あの絶海の孤島……

そう、君の所属する組織であるMPI(マーズ連邦未開惑星調査委員会)の秘密基地がある、あの島に放置したままのはずだが……

それがどうかしたのかね?」


ミュー「結論から言うとお前さんの飛空庭…… もう直しておいたぞ」

Dr・藪「!!」

 ミューの口から予想外の言葉が出たので、私は内心の驚きを隠すのに必死にならざるを得なくなった。


Dr・藪「……確か私の庭は、記憶が確かなら文字通り木っ端微塵になってしまっていて、とても修理が出来るような状態では無かったはずだが……」

ミュー「……あたしは叔父さんから、スクラップからどんな機械部品やメカを組み立てられるように、ガキの頃から訓練を受けてきた。

……だから、どんなに木っ端微塵になってしまった飛空庭でも、スクラップさえ残っていればいくらでも修理出来るよ」

Dr・藪「ほう……」

 ミューが機械技師として優秀だとは聞いてはいたが、まさか木っ端微塵になってしまった飛空庭を元通りに出来るとは……

Dr・藪「……伊達に、S(スクラップ)の二つ名は名乗っていないようだね、ミュー君」

ミュー「ああ。 うちの家系では、スクラップからどんなメカをも製作可能と認定された者だけが……

『スクラップ』の2つ名を名乗る事が許されるんだ」

Dr・藪「なるほどね…… で、私の庭は、今どこに?」

ミュー「試験航海も兼ねて、今孤島からアクロへ向かわせている。  多分、もうそろそろ着く頃だろう」

Dr・藪「そうか…… 感謝するよ、ミュー君」

ミュー「ところで…… お前さんはいままで何処に行ってきたんだ?」

Dr・藪「アルケミストギルドだ。 JobLvがようやっと50になったんで、アルケミストへの転職をしに……な」

ミュー「そうか…… で、試験の方はどうだった?」

Dr・藪「いや、これからだ。 何せあのアルケミストマスター……私が医学博士の資格持っている事に付け入って、特別仕様の課題をつきつけてきた」

ミュー「特別仕様の課題ね…… 一体、どんな課題だ?」


Dr・藪「……『殺し』だよ、ミュー君


ミュー「殺し……!!

 私の言葉を聞いて、さしものミューも驚愕の表情を浮かべた

ミュー「殺しって……アルケミストマスターが何でまた?」

Dr・藪「私も今日始めて知ったのだが……彼は私のような非合法暗殺者『仕掛人』の、元締も副業でやっているそうだ。

まあ今回の試験では、暗殺対象は人間様じゃないのが……救いといえば救いだね」

ミュー「そっか……それは一安心。 で、殺す相手は誰だ?」

Dr・藪「……『ドラゴン』と呼ばれる爬虫類系モンスターだ」

ミュー「げっ…… よりにもよってドラゴンかよ

 また、ミューは驚きの表情を浮かべた。


ミュー「藪……悪い事は言わん。 そんな課題、今すぐキャンセルして普通に試験受けたほうがいい。

あたしは以前、ミナファさん達とそのドラゴンって奴と一戦交えた事があるが…… 正直、全くと言ってもいいほど歯が立たなかったよ。

あれを倒すには、正直戦術核クラスの大規模破壊兵器が必要になって来るだろう」

 ミューは怖いほど真剣な表情で、私に忠告してきた。

 実際に一度ドラゴンと戦った事のある者の言葉は、それだけで十分な説得力を有する。

 だが……

Dr・藪「ミュー君。 試みに問うが、何故ドラゴン退治という仕事がF系ギルドでは無く、アルケミストマスターの所に来たと思うかね?」

ミュー「あのマスターが殺し屋の元締だからだろ? それ以外何の理由がある?」

Dr・藪「それもあるが、理由はもう一つある」

ミュー「もう一つの理由? そいつは、一体……?」

Dr・藪「薬学が未発達な時代ならともかく……」


Dr・藪「昨今のドラゴン退治は、『毒殺』が基本なのだよ

一々剣を持って正面から退治する時代は、もうとっくの昔に終わっている」

ミュー「そっか、毒殺……か。 なら、真っ先にアルケミストマスターの所に依頼が来ても、不思議ではないな。

だが、ドラゴンを毒で殺すにしても、それはそれで手間が発生するだろう」

Dr・藪「確かにな。 だが、正面からやりあうよりは、リスクは遥かに少なくて済むだろう。

それは実際にドラゴンとやりあった経験のある…… 君が一番良く分かっているのではないかね?」

ミュー「ああ……それは確かに」

Dr・藪「それにこの課題……達成させれば、アルケミスト転職が認められるだけなく、総額3Mほどの報酬を受け取れる手筈になっている。

先立つ物はあるに越した事は無いとおもうが…… どうだろうか?」

ミュー「なるほど…… で、藪。 ドラゴンを毒殺出来るっていう確証はあるのか?」

Dr・藪「ああ、あるよ。 というより、私はドミニオンの世界にいた頃に……何度かドラゴンを毒で殺った事があるからね」


ミュー「毒でドラゴンを殺るっていう、お前さんの方針はわかった。

だが、その毒は一体何を使うつもりだ?

高い毒薬を大量に使って大赤字になったり、非合法の薬物を使って後でトラブったりするのは、勘弁な」

 ミューは私に、釘を刺した。

Dr・藪「……その点も心配はいらない。 無闇に高い毒薬使わなくたって、ドラゴンは殺れる。

今回私が使う予定の毒は……」


Dr・藪「……料理下手な女の子の手料理だ

ミュー「へっ……」

 私の発言に、ミューは一瞬面食らったような様子であった。

 もっとも、彼女のこの反応は予想の範囲内であったが。

 しばしの沈黙の後……


ミュー「アハハハハハ!!!!

 ミューは珍しく、艦橋どころか下の居住区まで響き渡るような、大きな笑い声を上げた。

ミュー「おいおい藪さんよ、冗談ならもうちょっとマシな事言えや。 

料理が下手な女の子の手料理でドラゴンが殺れるんなら、誰も苦労はしねえよ」



Dr・藪「生憎だが、ミュー君。私は冗談を言っているつもりは無いんだがね」

ミュー「ククク……悪い悪い……。 その表情だとどうも、冗談言っているようには見えないな……」

 こみ上げる笑いを必死で押さえながら、ミューは私に詫びた。

Dr・藪「最近の研究では、ドラゴンという生物は爬虫類の分際で非常にグルメな生き物と聞くし、味覚も人間のそれとあまり変らないと聞く。

『至高の一品』と呼べる料理を食べさせればペットにする事も不可能では無いと聞くし……

逆に非常に不味い料理を食べさせた場合…… 拒否反応を起こして神経器官に重大な障害を引き起こし、最悪の場合は……」

ミュー「死ぬって事か……。  でも、素人のあたしにはにわかには信じられない話だがな」

Dr・藪「ついでに、この説を裏付けるエピソードも話しておこう。

昔、スカウトマスターがドミニオンの世界にいた頃…… 力量も無いのに誤ってドラゴン退治のクエストを引き受けてしまった事があった。

当時私と彼女とは同業者のよしみで、付き合いがあったのだが…… 困り果てた彼女は、当時医師国家試験を控えていた私に泣きついてきた」

ミュー「で、おまえさんはスカウトマスターにどういう応対をしたんだ?」

Dr・藪「試験前だったから、直接の手伝いは出来なかったが…… 迷うことなく、『毒殺』を薦めたよ。

ついでに、毒を上手くドラゴンに盛るために、対象の奴を『餌付け』するようにも薦めた」

ミュー「餌付けねぇ…… その餌付け、上手く行ったのか?」

Dr・藪「上手くいった……という表現は、ある意味当たっているかもしれないね。

次の日、彼女は自分の手料理を対象のドラゴンの所にもってゆき、竜にお供えしてきた。

そして、そのドラゴンもお供えの手料理を口にした……」

ミュー「で、その後どうなった?」


Dr・藪「食った瞬間、即死したよ。そのドラゴンは」

ミュー「へっ……」

Dr・藪「しかも、だ。 その一匹だけなら『偶然』という事で済むが……

その後スカウトマスターの手料理を食べた4匹のドラゴンが…… 同じように食べた瞬間、即死している」

ミュー「スカウトマスターが予め毒を持ったという可能性は?」

Dr・藪「無いな。 後でスカウトマスターの手料理を検査してみたが…… 毒物の類は検出されなかった。

もっとも、普通は料理に入っているはずのない、様々な物質があったのも確かだが……」

ミュー「……」

Dr・藪「もっとも、スカウトマスターの方も無事では済まなかった。

自分の手料理で5匹のドラゴンを即死させたとなっては…… 流石の彼女もショックだったのだろう。

以後彼女は『料理恐怖症』になってしまい……二度と包丁を持てぬ身になってしまったのだよ」

ミュー「そうか…… しかし、実際にドラゴンがくたばる瞬間を見ない事には、どうも信じられん話だな」

Dr・藪「……だろうね。 この説は実のところ、医療関係者の中でさえ、あまり信じられていない話だからね」

 ここで私は一旦言葉を区切り、続ける。


Dr・藪「……所でミュー君。 もし暇ならこの仕事……ちょっと手伝ってはくれんかね?

上手くいけばドラゴンが女の子の不味い手料理で死ぬ瞬間が、拝めるかもしれないよ」

ミュー「死ぬ瞬間ねえ……」

 ミューは少し考えこんでいたようだったが、やがて顔を上げた。


ミュー「……いいだろう。 丁度暇だった所だし、付き合ってもいいよ」

Dr・藪「感謝するよ、ミュー君。 では早速、実務的な話に入るとしようか」

 と、その時である。


茜少佐「ミュー様、藪様。お取り込み中の所申し訳ありません」

 居住区で休憩しているウルネに代わり、オペレーター席についていた茜少佐が私達に声をかけてきた。

ミュー「ん? どうした、少佐」

茜少佐「今、ミュー様宛てに通信が入っております」

ミュー「通信……誰からだ?」

茜少佐「相手はMPIのキュリー=K=ホワイトと名乗っておりますが……」

ミュー「キュリー……ああ……ホワイトの奴か。 今替わるよ、茜少佐」

茜少佐「はい」

 というなり、ミューは茜少佐に代わり、通信席に座った。

 暫く、通信先の相手と話し込んでいた彼女だが、やがて通信機を置き……


ミュー「藪、どうやらお前の庭、アクロに到着したようだ。

ついでにドラゴン殺しの実務的な話も、そっちでしよう」

Dr・藪「それは構わんが……盗聴や盗撮の対策は、私の庭に施されているのかね?

もしドラゴン殺しの事が動物愛護団体にかぎつけられると、何かと面倒な事になるのでね」

ミュー「ああ、盗撮・盗聴対策はお前さんの庭にもしっかりと施してある。

だから、秘密の話なんかでも遠慮なくやって大丈夫だ」

Dr・藪「そうか……ならいいか。 では早速、私の庭に移動するとしようか」



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