日記26話-2
戦闘庭フレイヤ
フロースヒルデ「いや〜気分爽快。 まさか本当に、ドレスが手に入るなんてね……ありがとう、ジーク。
あの福引所のピエロ野朗め、ざまあみなさい」
無事にドレスを手に入れる事が出来て、姉さんはご満悦の様子です。
ジークウルネ「で、姉さん。 折角手に入れたこのドレス、どうしましょう?
他のネタ装備のように、晴れ着として使いましょうか?」
フロースヒルデ「う〜ん。 折角こんな上等なドレスが手に入ったのだから、ただ普通に晴れ着として使うのもね……
ここは一つ、戦闘用の装備に融合して『晴れ着兼戦闘服』として、運用してみましょう。
狩りの時は誰かがドレスに憑依していれば、服が破ける事も無いでしょうし」
ジークウルネ「晴れ着兼戦闘服ですか…… まあ確かに、タンスの肥やしにするよりはマシかもしれませんね」
元帥「そうだね……
で、『みんなが着れるようにする』のと、なるべく高い防御効果を両立させる為には……
現段階では、融合対象は『おでかけ服♀』以外の選択肢はなさそうだね、フロースちゃん」
フロースヒルデ「そうね…… でも、今戦闘時に着ているアウトロースーツと、おでかけ服の物理防御力の差はかなりあるから……
そのまま着ると、かなり防御力が下がってしまうのよ。
だから……少しでも性能差を埋めるために、ここは精錬に手を出すしかなさそうね……」
ジークウルネ「精錬に手をだすのですか…… 個人的にはあまり気乗りしませんが、やむを得ませんね……」
精錬は文字通り、『結晶』とよばれるアイテムを使って武器防具を強化する事を指します。
しかし、その成功率は回数を重ねるごとに低くなり、欲を出して精錬しまくった冒険者が破産した、などという話も聞きます。
そして何より……
ジークウルネ「精錬をしてくれる大タタラ場の人たち、あの連続盗撮事件の犯人一味じゃないですか。
そんな人たちを儲けさせるのは、本心を言えば反対ですね」
菫少将「ああウルネ様。その点についてはご心配無く。
最近、大タタラ場は天界の国営企業の乗っ取りに遭い、経営者が変わったようですので……」
付近を掃除していた菫少将が、会話に入ってきました。
ジークウルネ「なるほど…… 天界の国営企業……というのが引っかかるといえば引っかかりますが……
少なくとも犯罪者を儲けさせるような事だけは、どうやら避けられそうですね」
菫少将「左様で」
藍副長「……フロース艦長。ウルネ様。僭越ではありますが、発言の許可を求めます」
そして唐突に、事務処理をしていた藍副長が、発言の許可を求めてきた。
フロースヒルデ「どうぞ、藍副長」
藍副長「めでたく精錬と融合に成功したとして……そのドレスを融合した装備、誰がメインでお使いになられるのでしょうか?
狩りを終えるたびに、ドレスを一々タンスの中にしまいこむのは、非能率的ですし……
それに、この艦の皆様を信頼しないわけでは無いのですが…… 誰かが装着したまま、事実上そのドレスを占有してしまう可能性もあります」
元帥「藍副長……何がいいたいの?」
藍副長「……私見ではありますが、そのようなトラブルを未然に防ぐ為に、ドレスの所有者をはっきり決めておいた方がよろしいかと。
ドレス所有者以外の方がドレスの着用を求めてきた場合は、特に理由が無い限りは、貸してあげるようにすればよろしいかと」
フロースヒルデ「そうね…… まあ順当にいけば、このドレスは引き当てたジークの所有物、という事になるけど……」
ジークウルネ「私は別にいいですよ。 85職服を『戦闘着兼晴れ着』にする予定ですので……
確かにドレスは着たいですが、しょっちゅうい着たい、という程でもありませんので…… 必要な時に貸してくれれば、それで十分です」
フロースヒルデ「なるほどね…… じゃあ、他のメンバーにドレスが欲しいか聞いてみましょう」
1時間後……
フロースヒルデ「で、このドレスを欲しがっている人をリストアップすると……
まずはこの私、フロースヒルデと……」
フロースヒルデ「ホワイトちゃん。それに……」
フロースヒルデ「ミューの三人のようね」
ホワイト「ちょっとミュー先輩、何勝手にドレス着てるんですか!?」
ミュー「勝手も何も、ちょっと試着してみただけだ。 すぐタンスに戻すよ」
ホワイト「ならいいですけど…… それにしても先輩、案外似合っていますね、そのドレス」
ミュー「ああ。 少なくとも極彩色ワンピ(マシンナリー75職服)や、囚人服(マシンナリー85職服)よりは遥かにマシだな。
まあ一着くらいこんな服、持っていても悪く無い」
ホワイト「へぇ……先輩もなんだかんだ言って、女の子なんですね」
ミュー「頼むからそれだけは言うな……
所でホワイト、お前、赤メイド服やBABY服とかウェイトレス服とか、何着も晴れ着もってくせに……まだ不足なのか?」
そう、ホワイトさんは艦内で一番おしゃれ好きで、可愛い洋服の所有数は当然フレイヤNo1です。
私も時々、ホワイトさんにお洋服貸してもうらう事もあります。
ホワイト「まあ、確かに可愛い服は沢山持っていますけど…… 可愛さと性能を併せ持った服は持っていませんからね、先輩。
私達スカウト系列の職服は、L75以上の物は俗に言う『エロスーツ』の部類に入りますから……
あんなの着たら目立ってしまって、怪盗のお仕事に差し支えます」
ミュー「このドレスも目立つんじゃないのか?」
ホワイト「怪盗業界でも、可愛いドレス着てお仕事している人はいますよ、先輩。
個人的には、エロスーツの方が遥かに目立つと思いますし…… 突起物に接触して怪我する可能性も高くなると思います」
ミュー「なるほどね…… いずれにせよ今回のドレス争奪戦、降りる気はさらさらないようだな、ホワイト」
ホワイト「ええ、勿論。
で、フロース艦長。 ドレスの所有権を決めるにしても、どうやって決めるつもりなのですか?」
フロースヒルデ「それについては、藪先生から説明させてもらうわ。
では藪先生、説明お願します」
藪「ああ、了解だ」
というなり、今まで部屋の隅で成り行きを見守っていた藪先生が、座っていたソファーから立ち上がりました。
藪「今、この『フレイヤ』はアイアンサウスへ向けて航行している。
ドレス所有希望者にはこれからサウスシティのある場所にて、とあるゲームをしてもらう」
ミュー「ゲームか…… て事は、そのゲームの勝者が、このスウィートハートドレスの所有者という訳か」
藪「ああ、その通りだ」
ホワイト「で、藪先生。そのゲームの内容は一体何でしょうか?」
藪「詳しいルールは、現地に到着してから説明するが……」
ここで、何故か藪先生は悪戯っぽい笑みを浮かべました。
藪「ゲームの名は『クホアンルーレット』、とだけ今は述べておこう」
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