日記第31話
今回の日記担当:ジークウルネ
某月某日・アイアンシティ
声「おや……そちらにいらっしゃるのはフロース様ではありませんか」
ある日の昼下がり、アイアンシティをぶらぶらしていた私達に声をかけて来た人がいました。
フロースヒルデ「あら……その声は」
フロースヒルデ「もしかして……西院さん?」
声をかけて来た人はシャーマンの女の子。 どうやら、姉さんの知り合いのようです。
西院「はい。 今日は仕事が休みなので、シナモン缶集めに精を出しているんですよ。
@2上がればベース50に到達しますので、頑張らないといけません」
フロースヒルデ「へぇ…… ベース50って事は、JobLvの方もそろそろ50に達するのよね。
となると西院さんももう転職か…… 早いものね」
西院「ええと……JobLvの方は……その……」
姉さんが『JobLv』とう言葉を口にした途端、何故か西院さんは焦りだしました。
フロースヒルデ「? どうしたの?西院さん」
西院「い、いえ……なんでもないです。 それよりフロース様、そちらの方は……?」
フロースヒルデ「ああ、西院さんはジークに会うの初めてだったわね。
彼女は私の妹のジークウルネ。 服をみれば分かると思うけど、ソーサラーをやっているわ。
ジーク、彼女は天神川 西院(さい)さん。 最近知り合ったシャーマンの子よ」
ジークウルネ「始めまして、天神川さん。 ジークウルネ=リュッチェンスです。
以後お見知りおき下さい」
西院「こちらこそよろしくお願いします、ジークウルネ様。 以後、私の事は『西院』と呼んでいただければ幸いです。
所でジークウルネ様。 ひょっとしてこの間の走行会の折……アリサ会長のVSEに添乗してらした方でしょうか?」
ジークウルネ「VSEというと、確かアリサが持っている電車ですよね。 確かに乗っていましたけど……」
と、ここで私は西院さんの声に聞き覚えがある事に気がつきました。
ジークウルネ「西院さん。ひょっとして……この間の電車レースの司会進行を勤めていた人ですか?」
被っている帽子が違うのですぐには分かりませんでしたが、この声はこの間の電車レースで司会を務めていた人のものとそっくりでした。
西院「ええ、そうですよ。 この帽子を被っておけば、ご納得いただけるかと……」
気を利かせて、電車レース司会時に被っていた帽子(チビチビハット)を被ってくれた西院さん。
フロースヒルデ「ところで西院さん。 私達、これから遺跡嵐退治にいくんだけど……
良かったら西院さんも一緒にどうですか?」
話題を切り替え、姉さんは西院さんを狩りへと誘いました。
西院「私は構わないのですが…… よろしいのですか?
お二人のもらえる経験値が減ってしまいますが……」
フロースヒルデ「その点については気にすることはないわ。 狩りってものは、より大勢でやった方が楽しいものでしょ」
西院「まあ、それは確かに……
それではお言葉に甘えさせて頂きます、フロース様、ジークウルネ様」
フロースヒルデ「決まり……ね。 じゃあそろそろ遺跡にいきましょ、ジーク、西院さん」
ジークウルネ「はい。 それと西院さん……」
西院「? 何でしょう、ジークウルネ様」
ジークウルネ「私の事は『ジーク』、もしくは『ウルネ』とお呼び下さい」
西院「はい。 それでは行きましょうか、ウルネ様」
遺跡入り口
フロースヒルデ「さて……ここから先は危険区域。 慣れている狩場とはいえ、油断は禁物よ。
ジーク、いつものように支援をお願い」
ジークウルネ「了解です、姉さん」
フロースヒルデ「西院さんは……そうね。 ここの敵は西院さんのLvだと危険だから、装備品に憑依してくれないかしら?」
姉さんは西院さんの身を案じて、そう提言しましたが……
西院「いえ……何もせずに経験値だけ貰うのも悪いですし……
及ばずながら私にも戦わせて下さい」
フロースヒルデ「了解。 但し、絶対に無理はしないようにね。
ジーク、ソリッドオーラは西院さんに最優先で」
ジークウルネ「了解です。姉さん」
遺跡内部
SE:ピキーン!!
遺跡に入るなり、早速ワサビが襲い掛かってきました。
そのワサビが狙った標的は……
ジークウルネ「!! あのワサビは西院さんを狙っている!
西院さん、一旦入り口に退避を!」
私は咄嗟に、西院さんに警告を発しましたが……
西院「大丈夫ですよ、ウルネ様」
ワサビが迫っているとうのに、平常心を崩そうとしない西院さんの姿がそこにはありました。
そして次の瞬間……
西院「飛天谷作流(ひてんたにつくりゅう)魔術……」
西院「マインスイーパー!!」
ワサビ「Gyaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
未実装スキルと思われる魔術を発動する西院さん。
その強烈な火柱の前に、ワサビはなすすべも無く消し炭にされてしまいました。
ジークウルネ「す、凄い…… ワサビを一確するなんて……」
ベースLv92・MAGMAXの私でさえ無理な芸当を平然とやってのけた西院さんに、あっけに取られる私。
それも高Lvの巫女さんならともかく、まだ転職前の身でやってのける西院さんの魔力には驚かざるを得ませんした。
西院「ご覧の通り、自分の身は自分で守れますので…… 私にも出来る限りお手伝いさせて下さい」
フロースヒルデ「了解。 でも、油断だけはしないようにね。
じゃあそろそろ狩りを始めましょうか、二人とも」
二時間後
フロースヒルデ「ふう……二人ともお疲れ様」
狩りも終え、ほっと一息つく私達。
ジークウルネ「さて、今日はどのくらい経験値がはいったかな…… ってあれ? これは……」
何気なしにログを見ていた私は、ふとある事に気がつきました。
フロースヒルデ「? どうしたのジーク? 何かあったの?」
ジークウルネ「今経験値のログを見ていたのですが…… 何だか経験値の入り方がおかしい気がするんですよ。
今日は3人で狩っていたのに、Job経験値だけ私と姉さん2人で狩っている時と一緒だったんです」
フロースヒルデ「え……それはどういう事?」
西院「お二方…… 恐らくその原因はこれかと思います」
というなり、西院さんは自分の経験値ログを見せてくれました
フロースヒルデ&ジークウルネ「こ、これは……」
西院さんの経験値ログには、通常では有り得ざる数値が並んでいました。
そう。ベース経験値は普通に入っているのに、Job経験値が0であるという事……
西院「詳しい事情の説明はここでは省きますが…… 私はさる事情の為、Job経験値が一切入らない身体になってしまったのです」
フロースヒルデ「Job経験値が入らない身体……
参考までに聞くけど、今西院さん、JobLvいくつなの?」
西院「……25です」
フロースヒルデ「Job25でJob経験値が一切貰えなくなってしまったって事は、まさか……」
西院「はい。2次職に転職する為には最低、Job30が必要ですよね。
Job25でシャーマンとしての経験が積めなくなった私にとって、最早エレメンタラー転職は叶わぬ夢。
言い換えれば私は……」
巫女服が着れない
西院「絶対に正装出来ない巫女、といった所でしょうか」
西院さんから出た衝撃的な言葉に、私も姉さんもしばし言葉を失ってしまいました。
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